薬物依存や副作用が危惧されるベンゾジアゼピン系薬剤、世界的な注意喚起アクションが行われる

「薬を止めたいのに止められない」恐怖

ベンゾ対策

厚生労働省職員と対話する向精神薬当事者・支援者ら

 化学メーカーに勤務する田中さん(仮名・男性)は、20年前にストレスから心療内科を受診、BZD系抗不安剤のソラナックスを処方された。日常的に服薬を続けた結果、4年前に精神的ストレスを感じて早朝覚醒し、目が開けられないという症状に陥った。  薬のせいかと考え、同じくBZD系のセパゾンに変えてみたが、猛烈な恐怖感が襲ってきていっこうに症状は改善しない。1か月入院していったん断薬に成功したが、退院後9か月して再服薬するようになった。 「家族も会社も、私が病気だからと投薬に疑問を感じていない。体調悪化が進んで孤独と不安を感じる。断薬に寄りそってくれる施設がほしい」(田中さん)  日本では2017年3月に独立行政法人(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、根拠のないBZD継続投与、長期使用の禁止と急な断薬を控えるようすすめる勧告書を医療施設に配布した。  2018年2月には、向精神薬の長期処方や多剤処方の診療報酬が改定された。しかしこれも、諸外国が「処方〜減薬期間あわせて4週間」で処方料・処方箋料を減額するのに対し、日本は「1年以上長期処方の場合」と基準が甘い。

「投薬が新たな精神疾患を生む事実」を隠蔽!?

 なぜ日本のBZD系薬剤対策は遅れているのか。10年間当事者支援を続け、米国国家認定減薬カウンセラーの資格を持つ藤永マキさんはこう分析する。 「うつや不眠は誰の身にも起こりえますが、相談した医師によって診断名がつけられると、薬漬けが始まる。多くの人は医師を信じますし、精神障害への日本社会の偏見もあります。そのため、疑問を持っても声をあげにくい。こういった風潮を利用して『投薬が新たな精神疾患を生む事実』を、国と官僚と利権団体が隠蔽しているのです」  ダグラスさんは「日本でもBZD系薬剤を処方された人たちの3年後、6年後を調べ、実態調査をするべき」と訴える。  日本では近年、中枢神経系に作用する薬剤の使用が急激に増えている。例えば、「ブラックボックス警告」(※)表示を義務づけられているADHD治療薬、ストラテラの消費量は、8年間で50倍にも増加している。(※米食品医薬品局(FDA)による、処方薬のリスクについての最も高いレベルの警告)  高齢者は肝機能が低下しているため体内に薬が残りやすく、長期服薬した高齢者の認知症発症率や交通事故率が上がるという研究結果もある。子どもから現役世代、高齢者まで、だれもが向精神薬の薬害と隣り合わせの日常を生きている。まさに日本の国民病と言っていい。  8月23日の薬害根絶デーには、薬害エイズ、ワクチンなどの薬害当事者と向精神薬薬害当事者が厚生労働省前でリレートークを行い、厚生労働省大臣に書面を渡す予定だ(一般参加も可能)。  偏見を超えて、国民全員が向精神薬とのつき合い方を見直す時期にきているのではないだろうか。 ※独立行政法人医薬品医薬機器総合機構ではBZD系薬剤副作用の実態を調べる患者報告をウェブサイトから集めている。 ※原稿内の記述について、「薬害訴訟による経営破綻はアメリカでのオピオイド系ではないか」とのご指摘をいただきました。誤解を与える表現だったことをお詫びいたします。追記・修正いたしました。 <文・写真/増山麗奈>
ますやまれな●ユーラシア国際映画祭代表理事
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