香港200万人デモの実相。一夜だけの解放区<大袈裟太郎的香港最前線ルポ5>

「一隅を照らす」

 若者たちに「なぜ警察は帰ったのか?」と聞くと「きみらみたいな外国からのメディアがたくさんきてくれたから、香港警察はこれ以上のイメージダウンを避けたのさ!」と握手してきた。  ハグを求めてくる若者もいた。  まじか、、、その朝、僕は人生で味わった事がないほど、たくさんの人々に誉められた気がする。  いや、2016年名護に墜落したオスプレイに近づき、写真を撮った時も、沖縄のおばあ様おじい様たちに抱きしめられた。  あの時と同じだ。おれたちのカメラは、時に国家が隠す事実を世界にさらし、踏みつけられている人々を解放する手助けができる。  前名護市長、稲嶺進さんの顔が香港の空に浮かんだ。 「一隅を照らす」  それが進さんの座右の銘だ。  それは自分の中でヒップホップの概念にも結びついていた。  これからも自分なりのやり方で社会の片隅を照らし続けることを、香港の空に約束した。  香港市民たちは非暴力で立法会を取り返し、さらに謝罪と法案の延期を掴み取った。  その朝の眠そうでいて、誇らしい若者たちの顔を、僕は忘れる事ができない。 短期集中連載:大袈裟太郎的香港最前線ルポ5 <取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎>
おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。 Twitter
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会