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国際NGO「国境なき記者団」が発表した2019年の「報道の自由度ランキング」で、日本は67位、主要7カ国(G7)中の最下位という結果になっている。そして、「日本のメディアの自由は、安倍晋三が2012年に首相に再就任して以降、衰えてきている」とまで指摘されている。
言論・報道機関は、本来、権力に不都合な真実をえぐり出し、広く国民に伝えることが求められている。近代国家にあって、新聞・テレビなどのメディアは権力を監視し、チェックすべき重大な役割を担っている。メディアは、民主主義を根底で支える極めて重要な存在なのだ。
しかし、ここ数年の我が国の新聞・テレビなどの大手メディアは、権力との対決を忌避し、権力に阿っている。
7月22日発売の『月刊日本』8月号では、「安倍政権にひれ伏したメディア」と題した特集を打ち出し、あまりにも不甲斐ない大手メディアの惨状について苦言を呈している。今回は同特集の中から、憲法学者の小林節氏へのインタビューを紹介したい。
── 6月下旬に、言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者が、国連人権理事会に提出した報告書で、「日本では政府が批判的なジャーナリストに圧力をかけるなど、報道の自由に懸念が残る」と警告しました。
小林節氏(以下、小林):ケイ報告者が指摘した通り、安倍政権に対する批判的な報道が封じ込まれています。
大手メディアのトップが政権に飼いならされているからです。
アメリカのメディアの経営者たちは、一切権力者とは食事をしません。それが、最低限のルールだと認識されています。ところが、日本の場合には、巨大メディアの社長や幹部が首相に誘われて、いそいそと出かけていく。それを恥とも思っていない。そして、社内では政権に阿る記者を要職に就け、政権を批判する記者を排除しています。
── 実際、NHKの岩田明子記者のように、政権に阿る記者が優遇されています。
小林:彼女は、民主党政権時代にも、権力の中枢に食い込もうとしていたようですが、民主党がダメだとわかると、安倍さんに食い込んでいきました。変わり身の早い人のようです。安倍さんの主張を代弁する彼女の解説を聞いていると、気持ちが悪くなるほどです。4月1日に新元号「令和」が発表された直後に、彼女は「この令和の『令』というのは、良いとか立派なという意味があります。たとえば嘉辰令月ですとか、そういう言葉にも使われるように、良い意味がある」などと得意気に解説していました。どう考えても、事前に新元号を知らされ、選定した理由まで伝えられていたとしか考えられません。
権力を批判すべきメディアが、権力と一体化してしまっているのです。
── 一方で、政権に批判的な記者の排除が強まっています。
小林:例えば、2015年に「報道ステーション」(テレビ朝日)で「I am not ABE」と書いたプラカードを出して政権を批判した元通産官僚の古賀茂明が、降板に追い込まれました。その際、女性チーフプロデューサーも番組から外され、経済部長に異動となりました。私も彼女から取材を受けたことがありますが、権力に阿ることなく毅然とした態度で戦っていました。
彼女は経済部長に就いてからも、森友問題などをきちんと追及する取材体制をとってきたと言われています。「彼女のクビを取る」という話は、自民党筋から何度も伝わってきていました。そして今回、彼女は「総合ビジネス局・イベント事業戦略担当部長」へ異動となりました。報道とは関係ない事業部への異動です。これほど露骨な左遷人事はありません。安倍総理と食事をして喜んでいるテレ朝の会長や社長が悪いのです。