大きな波紋を呼んだViviのキャンペーンTweet
── メディア全体が権力にすり寄るようになっています。
小林:自民党と講談社の女性ファッション誌「ViVi」のタイアップ広告も、重大な問題です。参議院選挙が近づきつつあるタイミングで、特定政党の広告を載せたこと自体も問題ですが、広告の中身も問題です。
「ViVi」は、読者に向けて、「どんな世の中にしたいか?」と問いかけて、意見を投稿してもらい、その返礼として、自民党のロゴと女性モデルが考えたというメッセージが刷り込まれたTシャツをプレゼントしたのです。ただし、そのメッセージは実際には自民党が事前に用意したものです。
驚いたことに、返礼として送られてくるTシャツには、「Diversity(いろんな文化が共生できる社会に)」などと印刷されていたのです。若い女性に対して、自民党があたかもダイバーシティを尊重しているような印象を与えることになりました。若い世代の女性票も取り込みたい自民党としては、願ってもない広告でした。
ところが、
実際に自民党がやっていることは、ダイバーシティの否定です。自民党は、
「LGBTは生産性が低い」と発言した、同党所属の杉田水脈衆議院議員を処分しなかったどころか、公的に謝罪させることも、発言を撤回させることもさせていません。
また、自民党の改憲草案も、
個人主義を批判し、家族や国家の価値を重視しており、全体主義的な戦前への回帰を志向しています。
講談社は、ダイバーシティやLGBTについての自民党の姿勢を承知しているはずです。であれば、「このような広告は載せられない」と断るべきでした。広告欲しさのあまり、自民党の言う通りに広告を出したことは重大な問題です。「ViViは自民党の機関誌なのか」といった厳しい批判が出たのも当然です。
── 自民党が巨額の資金と電通の力を使えば、圧倒的に有利な広告を展開できます。
小林:そこで、今問題となっているのが、憲法改正国民投票の際の広告です。資金の豊富な与党・改憲派は、大手広告代理店を使い、ゴールデンタイムの枠に圧倒的な量の広告を流すことができます。これに対して、資金の乏しい野党・護憲派は、細々と広告を出すことしかできないでしょう。
例えば、与党・改憲派が、有名タレントを起用して、「美しい日本!」「誇りの持てる日本!」など、情緒に訴えるCMを大量に流せば、国民投票の帰趨を決してしまいます。サブミリナル効果(潜在意識に刷り込む手法)は、与えられた広告量によって決まるからです。ところが民放連は、5月9日の衆議院憲法審査会で、「表現の自由」(憲法21条)に抵触する恐れがあるので、CMの量的規制はできないと述べたのです。
民放連は「表現の自由」と言っていますが、彼らの議論は決定的に間違っています。賛成説と反対説があって、賛成説の人数が多く、声が大きければ、反対説の声はかき消されてしまいます。
両方の説を公平にぶつけさせて、国民が判断するのが民主主義のあるべき姿です。つまり、表現の自由を尊重するためには、賛否両方の側に同じチャンスを与えることが必要だということです。そのためには、
同じチャンスとなるように、CMの量的規制をしなければならないのです。
表現の自由を担うべき民放連が、表現の自由より、収入増を選んだということです。しかも、彼らはCMの内容の精査で対応すると述べています。これは、
内容を民放連が検閲することにほかなりません。これこそ表現の自由に抵触する行為です。