小林:私はメディアの不公平な扱いを、身をもって経験しました。まもなく、参議院選挙がスタートしますが、メディアの公平性が改めて問われていると思います。
2016年に、我々は新党「国民怒りの声」を旗揚げし、同年7月の参議院選挙に出馬しました。公職選挙法によれば、参議院の場合、10人以上候補者を立てれば政党扱いされることになっています。ところが、メディアからは徹底して無視されたのです。マニフェストさえ報道してくれませんでした。マスコミ主催の党首討論会にも呼んでもらえなかった。
「なぜ政党として扱ってくれないのか」と関係者に問うと、「現役議員が一人もいない政治団体は政党として扱わない」と言われました。しかし、そんなことは公職選挙法のどこにも書いてありません。
メディアから完全に無視された我々は、選挙戦終盤に、関東のローカルテレビ局にスポットCMを出すことにしました。ところが、
局側は事前審査と称して、100項目にも及ぶ難癖をつけてきたのです。例えば、我々が主張していた「1割にも満たない人達が9割の富を握るような新自由主義経済はやめなければいけない」という主張について、「科学的根拠を示せ」と言ってきたのです。我々が、野村総合研究所の報告書を根拠として示すと、今度は「一民間企業の報告書には権威性がない。政府や大学など、しかるべき機関の報告書でなければならない」などと言って、審査を続けたのです。結局、CMを流すことはできましたが、無駄な労力を費やすことになりました。
実は、選挙が終わった後、局の担当者が謝りに来て、「私もあの事前審査はひどいと思いましたが、
上からの命令で仕方がなかったのです」と言いました。
権力に不都合な主張がマスコミに出ないように、あらゆる妨害が行われているのかもしれません。当時は、テレビ局を管轄する総務省の圧力がかつてないほど高まっていました。参議院選挙の5カ月前の2016年2月、高市早苗総務大臣が、衆院予算委員会で、「放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法に基づき、電波停止を命じる可能性がある」と語っていました。
その局の上層部も政権に配慮したのかもしれません。安倍政権は、アメとムチによって、メディア統制を強めています。メディアが政権からの圧力を跳ね返すためには、
メディアの経営者が矜持を持たなければなりません。そうでなければ、下で働く記者たちが記者としての矜持を保てるはずがありません。
(7月1日インタビュー、聞き手・構成 坪内隆彦)
記事提供元/月刊日本