「誰にでも一分の理はある」。メディアが伝える籠池氏の姿への違和感
5月8日、大阪市内のロフトプラスワンウエストで籠池泰典氏とトークイベントを行った相澤氏
本書では、NHK局内での会話や籠池泰典・森友学園前理事長との面談などが話し口調で再現され、まるで読者もその現場にいるような臨場感を感じることができる。
「発言はなるべく忠実に再現するようにしています。例えば、籠池さんについては今も取材して書いていますけれども、他のマスコミが報道する内容と同じようなものを伝えても意味がないと思っているんです。
人間って、いろいろな側面があるじゃないですか
。籠池さんも、テレビで見るだけでは『特異な思想を持ち、奇抜な行動をとるインチキ臭い人物』といったイメージを持たれがちです。しかし、それは一面的なものにすぎない。
実際に会うと、教養人であったり、熱心な教育者だったりといった多面的な部分が見えてきます。非常におもしろい人だなと。籠池さんの言い分をすべて正しいと考えているわけではありませんが、私は
『誰にでも一分の理はある』と思っています。
取材対象をどこまで愛せるか、取材対象に愛されるか。そして愛し愛される関係になった時に、本当のことをしゃべってもらえる。そこからどれだけ本音や事実を引き出せるかが、事件解明の大きな手がかかりになる。最近、私も本にサインを求められるようになってきて、そこには
『取材は愛』と書き添えているんです(笑)」
各テレビ局の上層部は、報道人としての魂を失っている
相澤氏は「今のNHKは私がいたころよりも、もっとひどくなっています」と見ている。
「
政権による放送への圧力・介入どころか、NHKの側からヨイショをしにいっている。これまでは絶対にやってこなかったことをやっています。安倍首相に食い込んでいると評判の岩田明子さんは、首相の代弁者かのようになっています」
さらに
「NHKだけでなく、各テレビ局の上層部は報道人としての魂を失っている」とも指摘する。
「安倍政権は、非常にマスコミ操作がうまい政権です。これはNHKだけでなく民放にもいえることですが、各局の上層部は政権とつながっています。本来であれば、官邸からの介入があっても『そんなことはできない』と、断固拒否できる立場にあります。しかし、それをせずに言いなりになったり、圧力もないのに忖度したり。
しかしこれを『安倍官邸が悪い』のかというと……。まあ『良い』とは言いませんけれども、自分たちに都合のいい放送をしてほしいと働きかけるのは、ある意味当然のこと。権力が何を言ってこようと、不当な介入だと思ったらつっぱねるべきなのに、それができなくなっている。だから支配されてしまう。これは報道機関側の問題です。
NHKに限ったことではなく、民放も新聞社も含めて、日本の報道機関全体の危機であると考えています」