そして現在は『大阪日日新聞』を発行する新日本海新聞社の記者として、森友問題の取材を続けている。
「まだ森友問題は何も解決していません。何のしがらみもないこの職場で、私は取材を続けます」
それでも相澤氏は「NHKに恨みなどはまったくありません」と語る。「組織とはそういうもの」と、冷めた見方をしているようだ。
「NHKの現場の記者の多くは真面目で、腑抜けた上層部とはまったく違う。
NHKには、優秀で気骨のある記者やディレクター、カメラマン、職員がたくさんいるんです。私は、NHKを今でも愛しています。
今、NHKの実権を握っている上層部の人々は、NHKを愛していない。私のほうがずっとNHKを愛していますよ。彼らは、自分たちの時代が安泰であれば、後はどうでもいいと思っている。はっきり言って、上があかんのです。上を総取っ替えしないと。
私は、受信料で成り立つ公共放送がこれからもあってほしいし、あったほうがいいと思っています。しかし、こんな放送をやっていたら視聴者にそっぽを向かれてしまう。今回の参院選で『NHKから国民を守る党』が一定の支持を受けて議席を確保したのも、NHKの放送に不満を持つ人が増えて、信頼がどんどん薄れていっていることの表れだと思います」
相澤氏は、一連の森友事件報道の舞台裏を綴った
『安倍官邸vs.NHK』(文藝春秋)を昨年12月に上梓した。森友報道がどのように歪められていったのかを詳細に説明すると同時に、相澤氏(と取材チームの面々)がどのようにして取材対象との信頼関係をつくっていったのか、放送段階で歪められないようにと局内で手を尽くす姿なども描かれている。
「そこはかなり意識して書きました。自分の取材手法を晒したら、記者という仕事に興味を持ってもらえるんじゃないかと。だからあえて自分が失敗した話も書いています。
若い記者や、これから記者を目指す人にも読んでほしい。
現在、ネット上の根拠のない情報のほうが信じられてしまい、テレビや新聞、雑誌の情報の方がフェイクだと言われるようになってきました。これに対してはメディア側の責任も大きい。
『プロの記者の仕事への「信頼」を取り戻したい』という思いもあったのです」