沖縄防衛局資料「ジュゴンの生息状況について」より(2019年6月)。民間船の航路は詳細が示されているが、土砂運搬船の航路は7隻分をまとめて黄色い太線1本で表示されている。緑の点線が死んだジュゴン個体Bの生息が確認された海域
同資料には、上記期間の船舶運航状況の箇所で不審な記載がある。赤、黄、青などの細い線で民間船の日別の航路が記載されていて、AIS(船舶自動識別装置)による航路の詳細が明記されている。
しかし、肝心の土砂運搬船7隻の航路は、防衛局が作図した黄色い太線のみだ。なぜAISデータを提示しないのか。これではジュゴンの死と工事の因果関係を否定するには説得力に欠ける。
また委員会の議事録を読むと、事務局と委員からAISが搭載されていない小型舶船との遭遇の可能性も否定できないとの発言がある。つまり、図には表示されていない船との因果関係も疑うことを提案しているのだ。
防衛局はジュゴンの解剖前に、自らが事業者として行う工事との因果関係を否定し、不確定要素も追加して議論をあやふやにすることで幕引きを図ろうとしているように見える。
また、『しんぶん赤旗』(6月21日付)によると、防衛省は共産党の赤嶺政賢議員に、2018年12月から今年5月末までに海上運搬に用いた船舶は約200隻に上り、行路は全て北まわり航路を使用していたと説明した。
政府が埋め立て承認請願書に添付した「環境保全図書」では、ジュゴンへの影響を踏まえて「県内からの資材の運搬は主として南側航路を利用する」と明記している。運搬船の航路が全て北回りだったならば、環境保全図書に反していることになる。