Twitter社が発表した宗教ヘイト禁止ルール。必要だが、カルトに悪用される危険性も

表現の自由との兼ね合いを守るのは「公正さ」

 もちろん「表現の自由」への配慮は欠かせない。ヘイトスピーチと、そうではない批判的言論をどう区別し、いかに「巻き込み事故」を減らして有効なヘイトスピーチ規制を行うかを考える必要が常にある。  今年6月に、川崎市の罰則付きヘイトスピーチ対策の条例素案が報道された(参照:“ヘイトスピーチ、「50万円以下の罰金」 川崎市条例素案”|カナロコ)。公共の場でのヘイトスピーチに対して、市長がやめるよう勧告、2度目の違反者には命令、3回目は氏名・団体名などを公表し刑事告発、というものだ。事前規制ではなく事後に判断する3アウト方式で、罰金については検察や裁判所の判断に委ねる。恣意的な独自基準によって罰することを避け段階を踏む点で、表現の自由を大きく損なうようには見えない。  そもそも行政が表現について「判定」し手を出すこと自体、「表現の自由」の観点から問題がある。しかしヘイトスピーチがこれだけ横行し、明らかに社会が不穏になりつつある現状を見れば、ヘイトスピーチを放置してまでこの原則論に固執することが現実的に正しいこととは思えない。具体的な規制の内容や手法が妥当かどうかを批判的に監視すべきではあるが、川崎市のケースは規制のあり方の一例として価値を感じる。  では、今回のTwitter社のルールはなぜ問題なのか。  Twitter社においては、ヘイトスピーチにしろそれ以外のルール違反にしろ、判断はTwitter社の独自基準だ(民間企業なのだから当然だが)。通報があるとTwitter社は対象となる投稿を削除してアカウントをロック(他ユーザーから閲覧はできるが、アカウントの主であるユーザーは投稿もDMもできない状態)したり、凍結(他ユーザーからも閲覧できず、使用も一切不可能な状態)したりする。凍結の際には、ユーザーに対してどの投稿が処分の理由なのかすら明かさず、異議申し立ても平気で無視する。  判断の具体的な基準や根拠が不明確で透明性もなく、処分を受けた側に対する公正さもない。もともと公正ではない企業が表現を規制するのだから、最初からお話にならない。ユーザーの表現を云々する前に自らの公正さを確立しろとしか言いようがない。

通報優位主義・単語優位主義の危険性

 私は、Twitterでペナルティを課せられる基準やプロセスの確認も兼ねて、幸福の科学に批判的なアカウントを対象に嫌がらせをしている信者のアカウントを狙い、幸福の批判者たちと一緒になって通報しまくる「祭り」をときおりこっそり開催している。嫌がらせをするアカウントがロックの憂き目にあうこともあるが、そうでないこともある。  信者側と批判者側との間で「通報合戦」の様相を呈し、批判者側がロックや凍結にあうこともある。その中で、たとえば幸福の科学信者が批判者を「悪魔」「地獄行き」などとする投稿は通報してもお咎めなしだが、信者に対して「バカ」などと投稿したユーザーはロックされたりする。  私には「バカ」より「地獄行き」のほうが酷い物言いに思える。少なくとも「どっちもどっち」くらいではないだろうか。Twitter側の判断基準がよくわからない。ただ、はっきりしているのは、数人で同じ投稿に的を絞って通報しまくればある程度の確率でロックや凍結に追い込めるということだ。印象としては、「○○人」とか「バカ」とか「死ね」とか、わかりやすい単語が含まれた投稿ほど「成功率」が高いように感じる。  使用歴の長いアカウントや、何かとケンカが多いアカウントであるほど、過去にさかのぼって無理矢理にでも「問題のある単語」を探し出せばいい。嫌がらせであろうが報復であろうが言いがかりであろうが、この条件を満たしさえすれば、相手のアカウントを使用不能にさせたり発言を萎縮させたりできる。  検証するまでもなく明らかだろうが、必要なのは「通報」と「問題のある単語」だ。  一方で、たとえば幸福の科学の公式アカウントや幸福実現党関係者のアカウントなどは、この方法でも凍結には追い込めずにいる。「通報」と「問題のある単語」という基準だけではなく、アカウントによって扱いが違うという印象を受ける。  参院選直前に、反差別運動を行う「C.R.A.C」の複数の関係者のアカウントが凍結された。一方で、差別的な発言を繰り返す政治家や作家などのアカウントは放置されているといった指摘は、以前から差別問題に取り組む人々の間でなされてきた。今年6月27日、Twitter社は「政府関係者、公職、公職に立候補している人」の問題投稿は削除せず警告表示のみを行うと発表している(参照:“政治家の不適切なツイートに警告 削除せず、説明責任求める”|中日新聞)  Twitterには、「通報」と「問題のある単語」によって処分されるアカウントと、そうではないアカウントが存在するのだ。
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カルトの「クレーマー体質」
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