「参院選投票日は休業」と決めたパタゴニアの日本支社長、その真意を語る

若者にメッセージを発信することによる“マーケティング効果”を期待

辻井氏

「同じようなキャンペーンをご一緒いただける企業があれば心強い」と呼びかける辻井支社長

──経営的には、書き入れ時である初夏の日曜日の売り上げが丸1日分減るわけですが、一方でマーケティング効果も期待しているかと思います。経営面では今回の試みをどのように評価して決断したのでしょうか。 辻井氏:創業者のイヴォン・シュイナードは、マーケティングの定義は「フィロソフィを広めることだ」ということを過去に何度も身を持って示してきてくれたように思います。その意味では、今回のキャンペーンには、まさにイヴォンの言う“マーケティング効果”を期待しています。  ビジネス的な収支という側面に限定して考えても、若い世代にこうしたメッセージを発信していくことは大切です。あと10年もすれば、今の高校生や大学生は私たちだけでなく、多くの企業にとって大切なカスタマーになる可能性があるわけです。 「これからの未来を担うべき若者」というのは大人が好んで使う表現ですが、実際に彼ら・彼女たちは、自分たちの未来を脅かす企業があるとすれば、そうした企業が販売する製品やサービスを良く思うはずがありません。

中長期的に考えれば、十分に理にかなう決断

辻井氏:世界経済フォーラムが186か国、3万1500人のミレニアル世代(2000年以降に青春期を迎えた18~35歳の世代)を対象にした調査では、「世界全体に影響しているもっとも深刻な問題は何か」という問いに対するもっとも多い答えは、景気でもGDPでも雇用でもなく、「気候変動/環境破壊」であり、その数は49%にも上ったそうです。  今、多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)を戦略や戦術に組み込もうと動き始めています。ミレニアル世代や、その下の13歳から18歳の「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代は、企業が本気で持続可能な社会の実現に貢献しようとしているかを、しっかりと見極めようとしているように感じます。  そういう意味で、1日の売上げという短期的な視点ではなく、中長期的な時間軸で考えれば、ROI(投資利益率)という観点でも十分に理にかなう決断であると考えます。  まだ選挙当日まで時間がありますので、もし同じようなキャンペーンをご一緒いただける企業様があれば、そんなに心強いことはありません。
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死んだ地球では、ビジネスも政治も文化も成り立たない
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