政策論の前にMMTをアカデミックな観点から評価すべき
MMTについて論じた2回の連載では、純粋に経済学的な話をしたかったので、れいわ新選組や反緊縮派の話は省略してきました。MMTの議論が政治運動のスローガンに使われるときには、経済学の話からだいぶズレてしまいますし、彼ら・彼女らがMMTのみに依拠しているわけではないためです。参院選前に間に合わせられず恐縮ですが、そういった話も今後できればと思います。
なお、最後に一言だけ苦言を申し上げさせてください。
MMTは、理論的にはまだ若い学説です。150年以上の研究蓄積がある主流派経済学やマルクス経済学とは違います。有効な経済政策を早く採用してほしいとの気持ちは分かりますが、性急に政策を主張するのではなく、まずはきちんとした、アカデミックな評価を受けてもらいたいのです。それがアベノミクス以降に政策を語るものの務めではないでしょうか。それはアベノミクスをサポートする理論家たちが決してやらなかったことでもあります。しかし、だからといって、アベノミクスと同じ流儀で政策を語らなければならないということにはなりません。むしろ、経済学界をバイパスして、政治的な支持を取り付けることに腐心したことが、期待と異なる結末をもたらしたといえます。
MMTには正しい点もあるかもしれませんが、筆者が一瞥しただけでも、矛盾やほころびが散見される程度の内容です。受け入れがたい批判もあるでしょう。しかし多くは善意からなされるものであり、MMTの自己点検に活かされるべきものです。少なくとも学術研究の観点からは、そういうものとして論争を捉えてほしいと願います。