自動車のタイヤに使われる天然ゴム農園が生態系破壊の原因に
東南アジアで急速に森林が失われている主な原因のひとつとして、天然ゴムの生産のための農園拡大があげられる。天然ゴムは、ゴムの木の樹液からつくられるが、今、東南アジアの森林が次々にゴムの木の農園へと変えられているのだ。
「世界の天然ゴムの約7割が、東南アジアで生産されており、そうした天然ゴムの約7割が自動車のタイヤのために使われています。ですから、東南アジアでの森林の危機は、日本にも無関係ではないのです」(川江さん)
ミャンマーやカンボジア、ラオスでは2000年代に入ってゴム農園が激増。このままのペースでいくと、2030年にはメコン地域のほとんどの森林が分断され、その生態系を維持することができなくなる見込みだ。
「生態系の頂点に立つトラは、森の豊かさの指標になります。トラの生息域を明らかにすることで、現地の政府に森林の保全計画の策定を促すことができます。特にミャンマーでは、長年の政情不安もあってトラについての情報もほとんどない。天然ゴム農園の開発がすすめられていますが、だからこそWWFが調査を行う必要があるのです」(川江さん)
WWFジャパン及びWWFミャンマーは、ミャンマー政府とも情報・意見交換し、開発せずに森を残すべき場所を明確にするなどの「土地利用計画づくり」を進めているとのことだ。
また、WWFは世界のタイヤメーカーとも話し合いを重ね、2018年10月、持続可能な天然ゴムのための新たなグローバルプラットフォーム、GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber)が立ち上げられた。