実際に現地調査で使われている無人カメラをみせる川江さん
トラの調査を行うために不可欠なのが、無人カメラ。トークイベント「メコンの森で野生動物を覗き見る」で、WWFジャパン森林グループの川江心一さんは「熱帯林では、下草や落ち葉が地表を覆っているため、足跡は頼りになりません。高温多湿で微生物の活動も活発なためフンの分解も早く、個体識別のためのDNA採取は難しいのです」と解説する。
「だから、トラが通りそうなところにセンサーで自動撮影するカメラを設置し、体の模様で個体識別するのです」(同)
調査の対象となる国立公園の大きさは東京都の2倍という広範囲なもの。
「道路もないような森の中でキャンプしながら、1~2週間かけて無人カメラを設置していきます。また、定期的にデータの回収やバッテリーの交換なども必要です」(同)
無人カメラで撮影されたトラ
こうした調査は、WWFジャパンへの寄付によって支えられていると川江さんは言う。
「5000円あれば、レンジャー1人が1日、森林の中での調査する日当や食料、装備費などをまかなうことができますし、2万円あれば、調査用の無人カメラを1台新たに買うことができます」(同)
トークイベントでは、実際に無人カメラが撮影したインドシナトラの貴重な写真も公開された。
「トラは体の左右で模様が非対称なので、2台のカメラで体の両側を撮り、個体識別します。トラの模様を自動識別するソフトもあるのですが、最終的には人の目による確認が必要です」(川江さん)