さてここで一例として、防衛省の報告書の中で有名となった男鹿市にある秋田国家石油備蓄基地を例としてみましょう。
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国土地理院電子地形図による秋田国家石油備蓄基地周辺図
一目瞭然ですが、西北西方向(ロシア側ウラジオストック方向)が標高700mの山塊に遮蔽されていますが、ざっと見て距離が8〜10kmあります。これですと三角関数のtan(タンジェント)の逆関数atan(アークタンジェント)で仰角5°未満と簡単に分かります*。また、google street viewでも、西北西方向に遮蔽物がないことが分かります**。
<*逆関数に不慣れな方でも、
カシオ計算機株式会社が公開しているサイトを使うと簡単に計算出来る>
<**
google street viewによる秋田国家石油備蓄基地からみた西北西方向>
少なくとも弾道弾防衛において、
ハワイ防衛専用の早期警戒レーダー兼迎撃基地としての機能を支障する地形ではありません。また、
対日弾道弾防衛においても、道南、青森、秋田、山形、盛岡、宮城の防衛には何の支障もありません。一方で、
本連載においてすでに論じてきたように、
上記の領域以北、以南の防衛にはあまり役に立ちません。
弾道ミサイルの軌道で検証!秋田配備イージス・アショア
そこで基本中の基本に立ち返って大圏コースを描いてみましょう。
弾道ミサイルの軌道をメルカトル図法の地図の上に直線で描く「兵器スペックだけ愛好家」=「カタログミリオタ」が相変わらずウヨウヨしていますが、それは南北を除き絶対にやってはいけないことです。当たり前ですが、大縮尺の地図の上で図をクルクル回すことは、「最大の禁忌」です。
今回は、沼津高専が公開している
「ウェブ地図で大圏航路を表示する (Leaflet版)」 を用いました。
図を見れば自明ですが、東倉里射場からオアフ島までの弾道は、弘前のやや南を通ります。北朝鮮(DPRK)の保有する火星14号の場合、概ね高度1000〜1500kmまで上昇しますので日本上空では、まだ上昇段階である事を考慮しても秋田国家石油備蓄基地から
見掛けで仰角80°以上を通過します。北北西でも
仰角70°前後ありますので、仮に計算ミスの15°の視界支障があっても全く問題ありません。
従って、
秋田国家石油備蓄基地での視界支障は口実であって他の理由が考えられます。