地元・秋田で演説した菅官房長官、イージス・アショア配備にはまったく触れず
イージス・アショアが配備される予定の、参院選秋田選挙区(改選数1)。この選挙区の応援のために現地入りした菅義偉官房長官は6月16日、生まれ故郷の秋田県湯沢市で講演と視察を行った。その後、秋田市内で開かれた中泉松司・参院議員(現職候補)の総決起集会に出席し、約22分間の応援演説をした。
講演の中で、菅官房長官は自身が導入に尽力した「ふるさと納税」による地方の活性化と、アベノミクスの成果を強調した。安倍政権が経済の好循環を作り出すために取り組んでいるのが「地方創生」で、その二大柱として「インバウンド(訪日外国人)と農業改革を切り札として取り組んでいる」と語ったのだ。
インバウンドについては「836万人だったのが昨年は3119万人」と3倍増以上になり、農産品の輸出も「4500億円から去年は9000億円」に倍増した、という数字を紹介した。そして「地方に効果が波及しつつあり、それは地価上昇に現れている」とも指摘した。
「地方の地価は25年間ずっと下落していました。人口が減少して『もう上昇することはないだろう』と言われていましたが、今年27年ぶりに地価が上昇しました。これはやはり、インバウンドの(増加の)影響が大きかったと思います。どこに行ってもホテルが足りない状況でありますから」
しかし「アベノミクスの波及効果で地価上昇」と菅氏がその成果を誇る一方で、イージス・アショア配備候補地となった秋田市新屋地区では、地価が下落を始めていた。
「転出を希望する住民が相次ぎ、子供から『新居は他のところに建てる』と言われた親もいます。街が壊れつつあるのです」(新屋地区の配備反対住民)
秋田での応援演説で菅氏は、安全保障について少しだけ触れた。
「安全保障もそうです。国民の皆様の安全を守るのが、私ども政治の役割です。いま野党は『全国で(参院選)一人区は全部野党共闘で戦っていく』と言っています。『安全保障をどうするのでしょう』と一度聞いてみたいです。
だって共産党は、日米安保条約破棄、自衛隊は解散ですから。それはちゃんと党でうたっています。そうした人たちに日本を任すことができるのでしょうか。できるわけがないのです。こうしたことも皆さんに理解をしていただきたいと思います」
菅氏は安保政策についての野党批判はしたが、政府与党(安倍自公政権)が進める「イージス・アショアの配備計画」は徹底的にスルーした。
米軍基地があるハワイ防衛前線基地となるイージス・アショアは当然、有事の際には先制攻撃対象となる。トランプ大統領が10分前に攻撃中止命令を出したイラン攻撃でも、レーダー基地が対象になったのと同じだ。
しかし菅氏は「国民の安全を守るのが政治の役割」と言いながら、有事の際に攻撃対象となる恐れがある秋田へのイージス・アショア配備についての説明責任を果たさなかった。
「アベノミクスで地価が上昇」と誇るも、配備予定地の地価は下落
野党の安保政策を批判し、イージス・アショアには触れず
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