さっきより張り紙が爆発的に増えていた。
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回廊に貼られたビラ
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回廊に貼られたビラ
そして人混みの中に入ると、僕のiphoneに次々にairdropでデモの予定が送られてきた。
驚いた、何と先進的なことか、彼らは最新のテクノロジーを手足のように使い、この抵抗を盛り立てているのだ。
SNSは大きな武器
バリケードを挟み警官隊と対峙する市民も昼間より4倍か5倍に増えていた。
手には「stop shooting people」などの文字が掲げられていた。
皆で、エンドレスで賛美歌を歌っていた。
泣きながら歌う者もいた。
マイナーコードが物悲しく響く、悲痛なメロディだった。
「今まで、警察はこんなことしなかったじゃないか?なぜ?」
香港の中国化を憂うそんな切実な嘆きを僕はこの歌から感じとった。
現場では、デモに参加した青年たちが、賛美歌を歌っていた。
この日から抗議の内容は廃案に加え、香港警察の暴力への追求を併せたものに変化してゆく。
SNSを駆け巡った昨日の香港警察の暴力が、香港市民の危機感によりいっそうの火をつけたのだ。
「弾圧は抵抗を呼び、抵抗は友を呼ぶ」
という沖縄の不屈の英雄、瀬長亀次郎氏の言葉を想い起こさずにはいられなかった。50年余の時を経て、今、2019年の香港で彼の言葉は何より現実的だった。
より強い抵抗を決意した香港市民たちと、強行姿勢を変えぬ香港警察。
さらなる激化が予想される次の日曜のデモで、僕は何を見るのだろう?
果たしてその勇気があるだろうか? これ以上、誰も傷つかず、血を流さずに彼らの自由を守る方法はないのだろうか、、、。
追い詰められた彼ら彼女らの悲痛な表情とメロディが、ホテルで眼を閉じても、ずっと脳裏にこびりついて離れなかった。
僕は最悪の事態に備え、自分の位置情報が常にわかるようにLEEJと、沖縄にいる数名の友人たちにシェアした。
SNSの心もとない命綱を、僕はこの夜、香港から沖縄へつなげたのだった。
短期集中連載:大袈裟太郎的香港最前線ルポ2
<取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎(Twitter ID:
@oogesatarou)>
大袈裟太郎●ラッパー、人力車夫として都内で活動していたが、2016年の高江の安倍昭恵騒動から、沖縄に移住し取材を続ける。オスプレイ墜落現場からの13時間ツイキャス配信や籠池家潜入レポートで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。新しいメディアを使い最前線から「フェイクニュース」の時代にあらがう。
レポートは「
大袈裟太郎JOURNAL」