バンクシーの公式サイトより
今年5月、イギリスのストリート・アーティスト、バンクシーが久々に発表した絵画が話題となった。水の都・ベネチアの路上で展開された9枚の絵画からなる作品の名は「ベニス・イン・オイル(油の中のベネチア)」。
現地で開催中の芸術展の権威を“油”彩画で皮肉ったものとも、観光地で大型クルーズ船が垂れ流す“油”や汚水などの環境負荷、いわゆる「オーバーツーリズム問題」を皮肉ったものとも言われている。
事実、ベネチアはクルーズ船で押しかける観光客による、地域に与える負担の問題に直面している。環境や景観保全に関する負担、治安や交通の混乱などにより、2014年から9.6万トン以上の客船の航行が規制されているのだ。
大型観光による地域の負担は、ある種の共通課題として、世界中で無視できないものとなっている。近年では、アムステルダムやボラカイ島などでもツアー観光客への段階的な規制が始まっている。
日本では、東京オリンピックや大阪万博など「誘致」ムードに後押しされて、インバウンドの期待値は高騰の一途だ。世界の潮流とは逆行し、政府は大型クルーズ船の寄港誘致にもご執心のようである。
2017年7月、港湾法の改正とともに国土交通省は「国際旅客船拠点形成港湾」として横浜などの6港を定め、2019年4月までに新たに鹿児島・那覇・下関の3港をこれに加えた。
クルーズ船を優先的に受け入れる際の拠点となるべく、ハードインフラの整備などを積極的に行い「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」(明日の日本を支える観光ビジョン構想)を目指す。指定地のほか、新潟や秋田などでも17万〜22万トンクラスの旅客船を受け入れるべく、先行投資は進んでいる。