「トラック運転手は“底辺職”」!? 謂れなき偏見に物申す

「便利な生活」がトラックドライバーの仕事を過酷にしている

 しかし、「トラックドライバー=底辺職」というイメージの形成は、こうした業界内の労働環境だけによるものではない。中には、世間が無意識のうちにしている「トラックドライバーの軽視」や「職業差別」が彼らを“底辺”に追いやっているケースもある。  例えば、ECサイトなどの通信販売などでよく見られる「送料無料」という言葉。  この4文字が、上記のような労働環境で働くドライバーの努力のもとに成り立っているものだと意識する消費者は、残念ながら多くはない。  少ないながらにも実際発生している輸送料・配送料に対して、「送料弊社負担」や「送料込み」など、他にいくらでも言い方がある中、わざわざこの「無料」という言葉が使われることに、「存在を消されたような感覚になる」と漏らすドライバーもいる。

世間によって植え付けられるネガティブイメージ

 また、スポーツ選手が怪我や成績不振によって戦力外になり、トラックドライバーに転身したというエピソードが時折ドキュメンタリー番組などで取り上げられ、「転落人生」などと題されることがあるが、筆者は現役ドライバーのころから「トラックドライバー」という職を「人が“転落”した先でする仕事」だとは一度も感じたことはない。  むしろ、こうしたスポーツ選手のような体力と精神力、スキルが必要な「専門職」だと思っており、今もその考えは変わっていない。  世間が当事者の感情を知りもせず「誰でもできる“底辺職”」というイメージを植え付けてしまうことに、大変な違和感を覚えるのだ。  さらに、昨今物議を醸している「交通事故」による扱いにも大きな違いがある。  交通ルールを守っていた歩行者を轢いて死亡させても逮捕されない暴走ドライバーがいるのに対し、トラックドライバーは安全運転していても、突如現れたサイクリスト(自転車乗り)や自殺者など、回避できない対象を轢くと、「交通強者」であるという理由から、高確率で実名報道・現行犯逮捕される(詳しくは、以前書いた”過失がなくても、まず逮捕。加害者になりやすいトラックの悩み”をご参照いただきたい)。  「上級国民」という言葉を耳にするたび、トラックドライバーは、世間以上にその“違い”を考えさせられるのだ。
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過酷ならば底辺職なのか
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