過失がなくても、まず逮捕。加害者になりやすいトラックの悩み

走る凶器にもなるがゆえ、加害者として扱われてしまうトラックの悲哀

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。  前回は「初心者ドライバー」について、前々回では「自転車について」と、「道路上の気を付けるべき存在」をトラックや一般乗用車目線で紹介したが、とりわけトラックが乗用車以上に安全を気にしなければならないのには、「過失の有無に関わらず“傷つける側”になりやすい」という事情がある。  人の命を容易に奪ってしまうトラック。今回はそんなトラックを運転するトラックドライバーの心理や、相手に過失があっても逮捕されてしまう「トラックの不条理」について紹介したい。

相手に過失があっても「加害者」になってしまう不条理

 警視庁がこのほど発表した「平成30年における交通死亡事故の特徴などについて」によると、同年に発生した交通死亡事故の被害者は約半数が歩行中、または自転車乗用中だったという。  特筆すべきは、そのうちの約3分の2の被害者に法令違反があったという点だ。  トラックは事故を起こすとその車体の大きさや高さゆえに、たとえ相手に過失があっても「怪我をさせる」側になることがほとんどだ。片やトラックドライバー自身は、人はもちろん、自転車や乗用車などと正面衝突しても、大きな怪我に及ばないことが多い。

「交通強者」であるがゆえに不利なトラック

 特に歩行者や自転車相手など「交通弱者」にとって、トラックはもはや「クルマ」ではなく「走る壁」。ゆえに「交通強者」であるトラックドライバーには、相手の過失による事故でも、頻繁に現行犯逮捕されるという現実がある(以下、事例)。 ●2018年6月 愛知県清須市の名古屋第二環状自動車道にロードバイクが侵入し、2車線のうち左車線で大型トラックと衝突。ロードバイクに乗っていた男性は腰の骨を折るなどの重傷、トラックを運転していた男性は自動車運転処罰法違反(過失傷害)で現行犯逮捕。(参照:J-castニュース●2014年11月 名神高速道路を軽乗用車で走行中に単独事故を起こし、その後、中央分離帯を乗り越え反対車線を歩いていた男性が、トラックや後続の乗用車など計5台にはねられ死亡。大阪府警高速隊は、トラックドライバーを自動車運転処罰法違反の疑いで現行犯逮捕。(参照:弁護士ドットコムNEWS●2013年3月 岐阜県多治見市の中央自動車道で、走行車線に停車していた軽乗用車にトラックが追突。軽自動車を運転していたとみられる中学3年生の男子生徒(15)と、後部座席にいた男性が死亡。トラックを運転していた男性は自動車運転過失致死容疑で現行犯逮捕。(参照:日経新聞)  現場近くのガードレールに車が接触したような跡があり、事故直前に軽乗用車がガードレールに接触し、弾みで走行車線に停止したとみられる。  こうした「加害者という名の被害者」には、トラックドライバーだけでなく一般ドライバーでもなり得るのだが、前述通りトラックは乗用車よりも「殺傷能力」が高く、また、制動距離(ブレーキを踏んでクルマが停止するまでの距離)の長さから衝突を避けられないことも多いため、こうした理不尽なケースが発生する確率が高くなる。
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トラックドライバーを救うのは「信頼の原則」
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