パチンコ業界紙に踊った「『おだち』を国政に」。その意味と背景

「週刊アミューズメントジャパン」(5月27日号)

「週刊アミューズメントジャパン」(5月27日号)の紙面

 パチンコ業界向けの専門紙に、刺激的な見出しが掲載されている。株式会社アミューズメントプレスジャパンが発行している「週刊アミューズメントジャパン」(5月27日号)のトップの見出しだ。(参照:「週刊アミューズメントジャパンweb版」

「おだち」を国政に!

 パチンコ業界内には、業界関係者が購読する業界誌(紙)が多数あるが、この「週刊アミューズメントジャパン」は、新聞仕様で購読する関係者も多い。その見出しが「『おだち』を国政に!」と謳った。「おだち」とは誰なのか。この「見出し」の意図するところは何なのか?

パチンコ業界と尾立源幸氏

「おだち」とは、前参議院議員の尾立源幸氏の事である。7月に予定されている、第25回参議院議員通常選挙で、全国区の比例代表自民党公認予定候補として立候補を予定している人だ。 「週刊アミューズメントジャパン」によれば、5月17日、都内のホテルで「前参議院議員 尾立源幸君を励ます集い」が開かれ、パチンコ業界関係者約700名が集ったという。集会には、業界関係者のほか、自民党の二階俊博幹事長や平沢勝栄衆議院議員、秋元司衆議院議員らが応援に駆け付けた。  世間では、「パチンコ業界と政治家の癒着」であるとか、「政治家のパチンコマネー」などというバッシングが真偽の証もなく言われたりもするが、実のところパチンコ業界は、表立って積極的な政治活動を今まで行ってはこなかった。その背景については割愛するが、今回はそうではない。パチンコ業界全体が、尾立源幸氏の応援を公然と始めた。  いわば、業界を挙げて「ぱちんこ族議員」を作るための奔走を始めた。  パチンコ業界はなぜ積極的な政治活動を始めたのかについては、本サイトに掲載した拙文「接近するパチンコ業界と自民党。パチンコ議連提言がもたらす『じゃんけんの構図』」をお目通し願いたい。  では尾立源幸氏とは、どのような人物なのか?  元々は民主党で2期当選した参議院議員であり、民主党政権時代の「一番じゃなきゃダメですか?」の「行政刷新会議」の中心的なメンバーでもあったが、2016年の参議院選挙で落選。今回、自民党に鞍替えして立候補(予定)することになった。元々パチンコ業界と縁が深い訳ではないが、新たな支持基盤を探す尾立氏の意向と、族議員を擁立したいパチンコ業界との意向がマッチングしたとみるのが妥当だろう。  ただ、尾立氏の(パチンコ業界側から見た)ストロングポイントは、元来の支持基盤として「大日本猟友会」があるということ。尾立氏は猟友会の会員でもあり、ハンターとしての資格も保有している。猟友会は、銃を扱うという点においても、害獣駆除や山狩り等の活動においても行政、特に警察庁との関りが深く、「警察行政が主管するパチンコ業界」という側面も見れば、適役に近いとも言える。
次のページ
「ぱちんこ族議員」であることの意味
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会