パチンコ業界紙に踊った「『おだち』を国政に」。その意味と背景

「族議員」であることの意味

 この段ではまず一般論を述べたい。  世間一般においては、「族議員」という言葉に何かしらの反感やアンチテーゼを持つ人が多い。そこには「癒着」や「金銭授受」等のダークなイメージが付きまとうからであるし、そのような収賄事件等の報道もまま目にするからだ。  しかしそれは「悪しき族議員」の話であり、「族議員」と言われる人たちが皆そういう訳ではない。視点を変えてみれば、「族議員」とは、その業種業界の「専門家」であるとも言える。まして国会議員であれば、業界に関する様々な情報が集約されるし、業界内に幅広い人脈も生まれる。「族議員」とは業界に対する使命感を持ち、国政の場において、質の高い専門知識と幅広い情報をもって提言する事が可能な人なのだ。医療や農業、建設や流通、国防や外交に至るまで、国政の場にはそれぞれ専門家と言われる「族議員」がいる。  その専門性は、審議議論の核心を捉えるうえでも、議会運営の効率化を図るうえでも、国政の場において必ず必要なものである。  今回、パチンコ業界が応援する尾立氏はどうか。彼を支持する団体はパチンコ業界だけではない。それは彼のHPを見れば一目瞭然だ。ちなみに、本原稿執筆時点で、尾立氏のHPに「パチンコ業界」は含まれていないが、今後、業界専用ページを立ち上げるという話は聞いている。  話を戻せば、尾立氏はパチンコ業界だけではなく、彼を支持する多くの業界の「族議員」にならんとしている。現時点において、そこに「悪しき」の冠は付かない。

問われているのはパチンコ業界の政治力

 ではパチンコ業界は、尾立氏を応援するにあたって、どれだけの影響力を持つのか。  パチンコ業界で口を糊する人は、おおよそ25万人~30万人程度と言われている。ここには全国1万店のパチンコホールの従業員はもちろん、メーカーや販社、その他関連事業者まで含まれている。票田としては、十分な規模と言えるであろう。  しかし問題は、その票田を刈り取る事が出来るのか、という事。  前述の通り、パチンコ業界は今まで政治的な活動を積極的に行ってこなかった。まして国政選挙となれば、まったくの未経験である。  業界が一丸となってとは言ってみたものの、それが直接的な影響力に転化するのかと言えば、業界関係者ですら口ごもる。  冒頭の「尾立源幸君を励ます集い」に応援に訪れた、自民党・二階幹事長は言った。 「みなさんの名誉がかかっている」  パチンコ業界が政治に急接近するという事は、今までの警察行政とのパワーバランスを失う事にも直結し、事の帰結によっては、より一層の苦境に立たされる可能性もある。お願いする側である自民党が、「みなさんの名誉がかかっている」と問題の主体をすり替えているのはどうかとも思うが、少なくともパチンコ業界関係者は、不退転の、崖っぷちの決断をしたのであろう。  パチンコ業界からすれば、少なくともこの決断は、栄えるための決断ではない。滅びぬための決断だ。しかしその決断の意義と意味を、ホール従業員の端々まで届ける事が出来るのか。そこにはファンもアンチもない。問われているのはただ業界全体の「政治力」である。 <文/安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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