photo by Marco Verch (CC BY 2.0)
世界最大の民主主義イベントであるインドの総選挙が行われた。まずはその規模を確認してみよう。有権者9億人以上、政党の数2,293、候補の数8千人以上、投票所の数100万以上だ。
投票は4月11日から5月19日にかけて順次行われ、開票が23日に行われた。勝利したのはモディ首相が率いる与党インド人民党(BJP)だった。選挙前にはさまざまな情報と憶測が行き交ったが、与党が過半数を握る歴史的勝利で幕を閉じた。
インドの選挙はその規模だけでなく、ネット世論操作の熾烈さでも知られている。インドでネット世論操作が大々的に行われるようになったのは2014年の選挙からだと言われている。この時、各党が書き込み要員=トロールを雇って世論操作を行った。世論操作に参加したメンバーのひとりが後に『I am a Troll: Inside the Secret World of the BJP’s Digital Army』(Swati Chatuvedi、2016年、12月1日)という本を刊行し、その実態を暴露した。その中に政権党は敵対する政党だけでなくジャーナリストや著名人までも攻撃対象にしていたと書いてある。
インドではネット世論操作はビジネスとして確立しており、フェイクニュースを流布させる際には多数のトロール要員を準備するだけでなく、短期間に多数の投稿を可能にするためのテンプレートがグーグルドキュメントによって作られて提供されていたという。(参照:『
The growing tide of fake news in India』Aljazeera、2018年12月11日)
多くの国がそうであるようにインドでもSNSが盛んである。特によく利用されているのはWhatsAppで2億人を超える利用者がいる(2003年200万人だった利用者が2016年には1.6億人に急増し、2017年時点ではWhatsApp世界最大のマーケットとなった)。
フェイスブックとWhatsAppでのネット世論操作を調査したレポート(参照:
『News and Information over Facebook and WhatsApp during the Indian Election Campaign』2019年5月13日)によると、インドではSNSが政治ニュースや情報の主な情報源になっており、
インド人民党からシェアされたコンテンツの25%以上、インド国民会議(INC)からのシェアの20%がジャンクニュースだった。
それ以外の政党発信の情報のジャンクニュースの比率はごくわずかだった。多くは
対立を激化するような陰謀論や過激な論調のものだった。画像も利用されており、外部のサイトにリンクしているものもあった。全体として、多数のフェイクニュースや極論にあふれており、ネット世論操作の状況は過去最悪としている(2016年のアメリカ大統領選を除く)。