4・8経団連会長会見の本質は、日本原子力産業の失策を救済するために市民にカネをせびること

2030年パリ協定達成に原発に固執する必要はない

 2030年にパリ協定の目標を達成できるかと言えば、新・化石資源革命と再生可能エネ革命の二本だてで十分可能です。  更に言えば、1980年頃からの一貫した少子化対策への無為無策と利権化による人類史上類を見ない急速な少子高齢化と人口減少によって日本のエネルギー消費は今後急速に細ります。2050年には2010年比三割減の1億人割れは確実です。人口動態はだけは正確に未来予測ができる唯一の指標です。  根本的な政策転換として明治・大正以来の棄民政策という国是からの脱却がなければ、社会は縮小し続け、今世紀末には確実に人口五千万人を割ります。人が居なくなれば経済も縮小しますし、エネルギー消費も加速度的に細りますので、2050年に2013年比80%の温暖化ガス排出削減は無理でしょうが、今世紀中には達成できるでしょう。  そもそも、罰則規定が無いとはいえ無理な目標設定であれば、遠くない将来、協定が崩壊するか、見直されます。
2100年までの日本の人口推移

2100年までの日本の人口推移
日本の人口減少とエネルギー需給 西村雄2011/11/21

<参照リンク: 日経XTECH

都合の悪い質問からは逃げた中西会長

 ここで突然司会が質疑の打ち切りを宣言します。市民の代行者として知る権利を代行するメディアの会見でこのような横柄な態度は極めて野蛮で下劣です。それにも屈せずに朝日新聞社の記者が質問しました。 ”質問8. 記者:あの、原子力の環境整備 っていうのはどういうのをさされているのかっていうのをちょっと併せてお聞きしたいんですが回答8. 中西今のままじゃあ片付きませんよねっていう、そういうことを書いてあります。”  極めて不誠実な回答です。朝日新聞の記者は「原子力の環境整備」という、曖昧模糊とした意味のない説明をより具体的にするように求めています。それに対して”今のままじゃあ片付きませんよねっていう、そういうことを書いてあります。”という回答は極めて不誠実です。  はっきり指摘しましょう。  中西氏の言う原子力の環境整備とは、「規制を思いっきり緩めろ」、「運用をいい加減にしろ」、「原子力安全・保安院時代に戻せ」、「市民は黙ってカネを出せ」です。  これまでの結果は福島核災害です。  更に記者は食い下がります。 ”質問9. 記者具体的には例えばこういう制度っていうのは? 回答9. 中西いや、それは読んでください。そっからご質問ください。”  結局逃げました。いつもの中西氏の手口です。議論を求めながら、想定質問には饒舌に答え、時間を浪費する。嫌な質問には答えない。時間切れに持ち込んで逃げる。まるで安倍晋三氏です。  この方には議論をする意思も能力もありません。中西氏が読めと言った冊子ですが、中身は極めてくだらないものです。そして朝日新聞の記者がした質問への答えはありません。そもそも、読んでから質問しろというのならば、会見の前日始業時間までに文書を公開するのが筋です。また、そうでなくても何時答えるからそれまでに読んでくださいと伝えるのが筋でしょう。  逃げる中西無責任です。  近年の日本の劣化と衰えを安倍晋三氏とともに体現するのが中西宏明氏といえます。総理大臣と財界総理、どちらも碌なものでないと言うことです。  中西氏は、会見中で平然と原子炉の運転年数を80年にすると主張していますが、日本では福島核災害の反省から、極めて例外的に20年延長を一回だけ特例として認めています。要するに40年を60年に延長し、その先はないのです。  その実力の無さによって国際原子炉市場からつまみ出された日立など日本の原子炉メーカーは、市場を失い風前の灯火です。そこで、恫喝型ヒノマルゲンパツPAを駆使して市民を脅し、“まず法律からっていう姿勢はちょっとやめましょうよって”言うことによって原子力規制行政を事実上、福島核災害前に戻そうとしています。  原子力は規制の上に成り立つ産業です。中西氏の様に、「今だけ、カネだけ、自分だけ」という破廉恥な事業者は原子力産業に存在する資格がありません。福島核災害は、中西氏の様な卑劣で無能な人物が跋扈(ばっこ)することにより生じたのです。
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改めて振り返る提言の「レベルの低さ」
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