事前すり合わせ済みとみられる最初の「2問」を読み解く
合計で9問の質問が記者からありましたが、
最後の2問について中西氏は回答を拒否しています。今回ははじめの2問について解説します。
最初の2問は幹事社である共同通信社と産経新聞社によるもので、所謂事前すりあわせ済の質問と見做されます。
共同通信社H氏による最初の質問は、今回の政策提言が求める「国民的議論」とは何であるかというものです。
中西氏の答えの冒頭は、全体像、総論について議論したいというものです。また、「
一番大事にしているのはマスコミが皆様方がどういう形であのー、ちょっ、国民の皆さんに知らせていただくか。」と答えています。
総論について、メディアによる啓蒙によって議論を進めたいというもので、後述するように各論は避けようとしています。PA(パブリックアクセプタンス)としては非常に古く時代錯誤なものといえます。これは1950年代に読売新聞社が中心になって行った原子力平和利用宣伝*が強く思い出されます。正力松太郎初代原子力委員長の個人的意向によって行われたヒノマルゲンパツPAの雛形とでもいうものです。正力氏は、その後正力タワーと呼ばれる新宿での550m電波塔建設に関心を移し、原子力への関心を失いました。
<*参照:『ついに太陽をとらえた : 原子力は人を幸福にするか』読売新聞社著 読売新聞社1954>
次にこの経団連による政策提言の正体をすぐに開示しています。
「資源エネルギー庁が、昨年じっくりやったですね、エネルギーの、その、長期の懇談会というか、長期エネルギー計画の懇談会みたいな、この議論がベースになっています」
これは、資源エネルギー庁(エネ庁)のHPでそれらしきものがすぐに見つかります。エネルギー情勢懇談会*と称して、2017年8月から2018年4月にかけて9回の懇談会が行われています。このエネルギー情勢懇談会委員の一人が中西氏です。たいへんにわかりやすいです。委員8人は、高齢で時代錯誤のガラクタに女性を数人混ぜるといういつもの手口です。
<*参照:
エネルギー情勢懇談会>
なぜ中西氏が、資料の中でも会見でもこの懇談会についてきちんと明示、明記しなかったのかは謎ですが、この懇談会への意見公募(参照:
資源エネルギー庁)とパブリックコメント(参照:
e-gov)は、
市民から大量に寄せられ極めて厳しい批判だらけですので見せたくないのかもしれません。
議論以前のたいへんな不誠実さといえます。
続けて、この政策提言がエネ庁の手によるものと言うことを明かしています。
「まあすでに資源エネルギー庁がですね、この、実はこの提言をまとめるのも、資源エネルギー庁と相当議論した上でやっていますんで、いまあるエネルギー調査会の各分科会に反映していくとか、あるいはもうちょっと幅広の議論がいるんだろうと思います。こちらの目的はですね、ことを一つ一つをですね、細部に渡って取り上げるというよりも、日本がこういう問題を抱えているということですね、しっかり議論していきたいということでありますので、いろんな工夫していきますのでぜひ皆様方にもよろしくお願いしたいとそういうふうに思います。」
エネ庁は、福島核災害の主犯として厳しい批判を浴びており、政策提言を出せる立場になく、玉虫色の提言しか出せていません(参照:
資源エネルギー庁) 。但し提言のポイントを見ると、今回の経団連による提言(中西提言)そのものとだいたい重なります(参照:
資源エネルギー庁)。
要は、
一昨年から昨年までエネ庁で行われた中西氏を委員とするエネルギー情勢懇談会の結論を利害密接関係者である経団連、とくに中西氏らによって肉付けし、その過程においてもエネ庁が密接に関与していると言うことがこの応答で明らかとなっています。
そして、あくまで総論だけの議論を市民に求め、各論、細目については議論を求めないと発言しています。