世界を席巻する女性アーティストは何を歌っているのか? ビリー・アイリッシュからジャネール・モネエまで

Billie Eilish

17歳にしてポップのアイコンへと上り詰めたビリー・アイリッシュ (Photo by Timothy Norris/Getty Images for Coachella)

 現在、世界中のヒット・チャートをある17歳の女のコが席巻している。彼女の名はビリー・アイリッシュ。「17歳ってことはアイドル?」。年齢の数字だけを鵜呑みにしてしまうと、そう思う人もいるかもしれないが、決してそうではない。彼女は、自らの自作曲を通じて、世の傷ついて病める少年少女たちに等身大の顔つきや目線で囁きかけるように歌いかけ、新たな時代のオピニオン・リーダーになりつつあるのだ。

自殺やドラッグを歌うビリーの言葉の特殊性

 そんなビリー・アイリッシュは何を歌っているのか? また、彼女を生み出した背景にある、最近の世界の女性シンガーたちは何を歌ってきて、それはどのように進化しつつあるのか? 本稿ではそれを探っていくことにしよう。  ビリー・アイリッシュとはかなり特殊な存在だ。アルバム『When We All Fall Asleep Where Do We Go』でのデビューは17歳3か月で起こったが、レコード会社からの音源発表はすでに15歳のときから始まっている。しかも、そのような年齢でのデビューに関わらず、製作には有名なプロデューサーを起用せず、共作者は4歳年上の実兄フィニアス・オコンネルのみで、レコーディングもほぼ兄妹だけで行っている。その「現在の若者によるリアルなDIYミュージック」の姿勢は今日までずっと続いていることだ。  この兄妹による楽曲コラボレーションにおいて、ひときわリリックに敏感なのはビリーだ。幼い頃からヒップホップが好きで、かつ、影のある屈折した女性のインディ系のシンガーソングライターに強い影響を受けてきた。それは「死ぬために生まれてきた」と歌い、その大敗した文学性とセンセーショナリズムを持ってダークなカリスマとなったラナ・デル・レイや、望んでいたアイドルになれなかった体験を逆手にとって「自分こそがプリマドンナ」と自称し劣等感を前向きなパワーに変えていくマリーナ&ザ・ダイアモンズ(現マリーナ)など。彼女の音楽性は、こうした要素のかなりわかりやすい集合体でもある。  そんなビリーは2年ほど前から「自殺」をテーマにした『Bellyache』という曲で一部で注目を集め、別の曲が、少女が自殺するまでの過程を描いたショッキングなドラマ。ネットフリックスの『13の理由』で使われたことで、アンダーグラウンドでジワジワ広がった。そうこうしているうちに、彼女の楽曲はSpotifyのような楽曲配信サービスや歌詞検索サイトで話題を呼ぶようになっていた。

不気味なPVも話題に

 そして今年の1月末、アルバム発表のアナウンスと同時に解禁された曲『Bury A Friend』は大きな話題を呼んだ。直訳すると「友達を埋めろ」というタイトルで、しかも同時に発表されたMVではビリー本人が幽体離脱し、複数の謎の手に襲われるというショッキングな内容(それ以前にも青い血や、蜘蛛が口から出るなど、MVは猟奇的だった)で話題騒然となった。この曲の真意は「もう一人の自分を埋めろ」ということで必ずしも悪い意味ではなく、逆説的にポジティヴなメッセージに取れる曲でもあった。  そして、さらにこのアルバムからは「あなたがいっそゲイだったらよかったのに」という失恋ソング『Wish You Were Gay』や、人気エモ・ラッパー、リル・ピープの急死の原因にもなって騒がれたドラッグ「ザナックス」へのアンチ・ソング『Xanny』など、タイムリーでセンセーショナルな話題を、苦悩する人の側に立脚点を置きながらも、力強い生命力で訴えていく力をビリーの言葉は持っている。
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女性アーティストたちを読み解く「エンパワメント」とは?
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