一方、こうした超小型衛星の打ち上げ専用の超小型ロケット(Micro Launcher)は、世界的に開発が活発になっており、すでに米国企業「ロケット・ラボ(Rocket Lab)」の「エレクトロン(Electron)」は運用中で、商業化も実現している。さらに、打ち上げ間近と目されている企業は他にもいくつかある。
ただ、すでに飛んでいるエレクトロンはともかくとして、他社はまだ技術的なハードルでつまづく可能性がある。今後の開発次第では、ZEROも十分に追いつき、そして追い越せる余地はある。ISTは今年3月、「みんなのロケットパートナーズ」を発足し、大手商社の丸紅や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと連携し、資金面、技術面でのサポートを受けられるようになったこともあり、その追い風になるかもしれない。
また、ZEROの特徴として、米国製部品を使っていないことも挙げられる。米国は「ITAR」と呼ばれる国際武器取引規制を設けており、米国製部品を使ったロケットや衛星の打ち上げが自由にできない。しかし、米国製部品を使わないZEROは「ITARフリー」なため、その規制を受けず、自由に活動できる。この点は、米国製のロケットにはない強みといえよう。
今回のMOMOロケットの成功で、ISTは宇宙に大きな一歩を刻んだ。今後、それを足がかりに、ZEROの開発と事業化の成功に向けて大きく飛躍できることを、そして今回の成功が、日本の宇宙ビジネス全体にとって追い風になることを期待したい。
ISTが開発中の、超小型衛星を打ち上げられる超小型ロケット「ZERO」の想像図。2023年の初打ち上げを予定している 提供: インターステラテクノロジズ
<文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
Webサイト: 「
КОСМОГРАД」
Twitter:
@Kosmograd_Info
【参考】
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観測ロケット「宇宙品質にシフトMOMO3号機」打上げ実験の結果について
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観測ロケット「MOMO」2号機打上げ実験報告書(第2報)の公開 | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.
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MOMO | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.
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ZERO | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.
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宇宙輸送事業の実現を後押しする法人サポーターズクラブ「みんなのロケットパートナーズ」始動(PDFファイル)