その後の調査で、原因は2号機で新たに追加したスラスターにあったとほぼ断定。スラスターの噴射ガスを作り出す「燃焼器」と呼ばれる部品に問題があり、その結果配管が溶け、エンジンが止まったとされる。
これを受けてISTは、改良を施した3号機を開発。推進剤(エンジンを動かす燃料と酸化剤のこと)のタンクからスラスターにつながる配管の配置を見直すとともに、燃焼器の部品も改良した、3号機を開発。さらに、事前に実機とほぼ同じ機体を使って燃焼試験を行うなど、打ち上げ前の試験や検証もより入念に行うようにした。
また、2回の失敗にもかかわらず、スポンサーやクラウドファンディングは順調に集まった。そのうち、ネーミングライツ(命名権)を取得した、SHIFT社長で実業家の丹下大氏によって、今回の3号機は「宇宙品質にシフト MOMO 3号機」と命名された。クラウドファンディングでは過去最多となる1173人からの出資があり、支援総額は1981万円にのぼった。
さまざまな試練を乗り越え、そして期待も背負ったMOMO 3号機は、2019年5月4日(土)5時45分、北海道大樹町にある発射場を離昇した。ロケットは快調に上昇し、打ち上げから約4分後に高度113.4kmに到達。その後、安全に海上に落下した。
民間企業が単独で開発・製造したロケットが、宇宙空間まで到達したのは日本初であり、同社にとって、そして日本の宇宙開発の歴史とって大きな快挙となった。
この3号機には、高知工科大学の実験装置と、神奈川県相模原市を中心に飲食業や食品販売を営む、GROSEBALの「とろけるハンバーグ」を搭載していた。たんにロケットが宇宙に届いたというだけでなく、まさにISTが想定する、観測・実験や宣伝といった用途での観測ロケットの利用も果たされた。
宇宙空間に到達したMOMO 3号機。丸い地球と黒い宇宙が見える 提供: インターステラテクノロジズ
MOMO 3号機の打ち上げが成功したことで、これからはMOMOロケットの量産や打ち上げの高頻度化、それによる完全な商業化が次のステップとなる。すでに、3号機の打ち上げ準備中から、その傍らで4号機の製造を進めていたとのことで、近いうちに次の打ち上げが見られるかもしれない。
さらにISTでは、超小型衛星を打ち上げられる超小型ロケット「ZERO」の開発も進んでいる。
近年、電子部品の小型化・高性能化などが進んだことを背景に、質量数kgから100kgほどの超小型衛星が世界的にブームとなっている。しかし、現状では肝心の打ち上げ手段が少なく、大型ロケットの空きスペースに”ついで”に載せて打ち上げるのが一般的となっているが、これでは打ち上げ時期や軌道を自由に選べない。
そこでISTは、超小型衛星の打ち上げ専用の超小型ロケットであるZEROを開発することで、そうした状況を改善し、そして新たな市場を創ることを目指している。
ZEROは100kgの衛星を高度500kmの軌道に打ち上げることができる性能をもち、また、自社で設計から製造まで一貫して行ったり、工場の近くに発射場を設けたりなどし、1回あたりの打ち上げコストは6億円以下と、低コストかつ便利な打ち上げを目指すとしている。現時点で初飛行は2023年に予定している。