「増税可能な経済状況(好景気)である」と、街宣でアピールした安倍首相
安倍首相(左端)は大阪12区補選の最終日の4月20日に現地入り。選挙区内3か所で北川晋平候補(中央)の応援演説をした
参院選の前哨戦として注目された「大阪12区補選」の投開票前日(4月20日)。寝屋川市で、安倍首相が北川晋平候補(自民党公認)の応援演説を行った。
「(大阪で開かれる)G20の課題は何か。それは、働く場を作っていく雇用です。そして収入を上げていくということでもある。(中略。有効求人倍率だけでなく)給料も上がっています。今世紀に入って最も高い賃上げが5年連続で行われている。
うれしかったことは、中小企業、小規模事業者の皆さんの賃上げ、この20年間で最も高い水準になってきているし、パートでがんばる皆さんの時給も過去最高になっています。しっかりと雇用と作り、そして収入を増やしている」
安倍首相の発言は、首相側近の萩生田光一・幹事長代行が4月18日に「6月の景気指標しだいでは消費増税延期もありうる」とネット番組で示唆、この問題が補選の一大争点に急浮上する中で飛び出した。そこで「アベノミクスで収入アップなどの成果が出ている」とアピールし、「増税可能な経済状況(好景気)である」と、萩生田発言の波紋を打ち消そうとしていたのだ。
しかし、安倍首相のいう「収入(名目賃金)」は増えていても、物価上昇分を差し引いた「実質賃金」は下がっている。可処分所得を決めるのは実質賃金の方で、家計消費の力強さを示すバロメーターとして用いられるのも名目賃金ではなく、実質賃金だ。
実際は増税困難な“アベノミクス不況”に陥っているのに、安倍首相は経済指標のすり替えで好況をデッチ上げ、「増税可能」とアピールして萩生田発言の火消しに努めたといえる。まさに不正勤労統計問題で発覚した“アベノミクス偽装”が、補選でも繰り返された形に見える。
しかも安倍首相は、消費増税を前提とした「幼児教育・保育の無償化」についても街宣で触れたため、TBSは「安倍首相“増税延期発言”打ち消す」と銘打って、こう報道した。
「安倍総理は、大阪での街頭演説で消費税の増税分を財源とする幼児教育・保育の無償化を10月から行うと改めて表明。『10月の増税の延期もあり得る』との考えを示し、波紋を広げている側近の萩生田幹事長代行の発言を打ち消した形です。『10月には3歳から5歳、幼児教育、保育の無償化を行います。経済的な負担を軽くして、子どもを産み育てたいという皆さんの夢を可能にしていきたい』(安倍首相)」
安倍首相が選挙区内3か所で街宣をした4月20日には、麻生財務大臣も現地入り。北川候補と一緒に商店街を練り歩いた後、個人演説会でマイクも握った。筆者が終了後に直撃して「消費増税が争点になっていますが」と聞くと、「終わった話だ」と麻生大臣は増税延期を否定した。