<11問目>
最後の質問。安倍総理の答弁で浮き彫りになった国際的な人権感覚との乖離こそが日本の国際的な信用を損なっていると指摘する小川議員。
小川議員:
「私は、この問題についての国際感覚あるいは人権感覚といいますか、全く総理のその対応について、私は寂しい限り、むしろ日本の国際的な信用を損なうことになっているんじゃないかと思いますが。すなわち下院において、そこで慰安婦の方が証言された。それが事実誤認だからもういいんだと言って通るほど、この国際環境は甘くはないと思います。むしろ、こうした人権侵害についてきちんとした謝罪なり対応をしないということのこの人権感覚。あるいは過去に日本が起こした戦争についての真摯な反省がやはりまだまだ足らないんではないかという、この国際評価を招く。こうした結果になっているんではないでしょうか。どうですか、総理。」
安倍総理:
「
私は全くそうは思いません。小川議員とは全く私は立場が違うんだろうと思いますね。戦後六十年、日本は自由と民主主義、基本的な人権を守って歩んでまいりました。そのことは国際社会から高く私は評価されているところであろうと、このように思います。これからもその姿勢は変わることはないということを私はもう今まで繰り返し述べてきたところでございます。小川委員は殊更そういう日本の歩みを貶めようとしているんではないかと、このようにも感じるわけでございます。(青信号)」
8問目に続いて、安倍総理の慰安婦問題に対する認識がはっきりと確認できる。発言の是非は別として、質問には回答しているため
青信号とする。
この答弁を受けて、小川議員は次のように述べて、全11問に及んだ慰安婦問題に関する質疑を締めくくる。
小川議員:
「大変な暴言でありまして、私は、アメリカの下院でそうした決議が出ると、出るかもしれない、既に委員会では決議が出ているわけで、今度は下院、院全体で決議が出るかもしれないと。そのことによって生ずる我が国のこの国際的な評価、これが低下することを憂えて言っているんですよ。」
安倍総理は冒頭の1問目で河野談話を基本的に継承するとしつつ、以下の質問には頑なに答えようとしなかった。
・「強制はなかった」発言(
2問目、3問目)
・米国議会での慰安婦の証言(
4問目)
・強制は国によるものであったのか(
6問目)
・どのような強制があったのか(
7問目)
・河野談話にある日本軍の関与を認めるか(9問目、10問目)
また、質問に正面から答えた8問目と11問目の答弁には安倍総理の歴史修正主義者としての思想が色濃く表れているように感じられる。
最後に、今回の視覚化の色分けで灰色(不要な言葉、意味不明な言葉、似た言葉の繰り返し)を使わなかった理由を説明する。
記録(映像)が残っていないからだ。
参議院の映像は約1年間(正確には会期終了日から1年が経過した日まで)しか公式Webサイトに残されないため、12年前の映像はすでに視聴できない。そのため、今回の分析対象とした全11問の質疑を映像で確認することが難しく、発言が綺麗に清書された議事録に頼らざるを得なかった。
✳︎衆議院は2010年1月18日以降の映像を公開
そもそも、慰安婦問題の検証を困難にしている原因も記録が無いことである(旧日本軍が記録を焼却したと言われている)
たった1年ほど前の国会質疑の記録(映像)が残っていないことは、慰安婦問題と同様、国会答弁の検証を困難にする恐れがある。
「記録の破棄」については、こうした弊害があることを改めてここに記しておく。
<文・図版・動画作成/犬飼淳 TwitterID/
@jun21101016>
いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。
犬飼淳氏の(
note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(
日本語版/
英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している