支配的で理不尽なモラ夫の振る舞いに、「私が悪い」と自責する妻たち<モラ夫バスターな日々10>

モラ夫は支配者でいたいがため、妻に落ち度がなくてもキレる

 そして、逃げない妻たちは、現状の選択を合理化する。  前出の外に、例えば、①夫を怒らせるドジで気の利かない自分も悪い、②夫はモラだが、良性のモラ(または単純な亭主関白)と自分に言い聞かせる、などの合理化がある。  しかし、夫が怒るのは、妻を支配するためであり、妻が「ドジで気が利かない」からは本当の理由ではない。  万一、ドジでなければ、例えば、「偉そうにしている」などと絡むだけで、怒る理由は、何でもいいのだ。  そもそも、一方的に怒ることに、どれだけの正当性があるのか。愛していれば、加害などしないはずである。  また、仮に、「良性モラ」、「単純な亭主関白」という概念が存在し、それに該当するとしても、モラが猛毒であることに変わりはない。我慢できたとしても、無理による毒は、いずれ心身にまわる。

「妻のワガママ」「妻の心が弱い」モラ夫の責任転嫁であり自己正当化

 ところで、多くのモラ被害者は、モラ夫には、モラの自覚がないと言う。  妻の気持ちがわからない、空気が読めないなどの声も聞く。しかし、これは、モラ夫のマジックである。モラ夫たちは、あたかも自分が全くモラをしていないのかのようにとぼける。  これには妻たち、時折、専門家たちまで、騙される。  しかし、法廷などで、モラ夫に質問すると、モラ夫は、自らのモラをかなり正確に再現することができる。  そして、自らのモラを正当化し、「妻に対する指導は当然のこと」と言い張る。また、妻の気持ちについて、「確かに気落ちしていましたね」と認めたとしても、「単なるワガママ」「精神が弱い」と妻に責任転嫁する。  つまり、自らのモラ加害や妻の気持ちを認識してはいるが、軽視ないし無視しているのだ。妻が傷つくことよりも、自分の思い/支配的立場が優先するのだ。  この傲慢さは、自らを家長/支配者と位置付けることからくる。したがって、人格の基礎となっている社会的文化的規範が修正されない限り、モラ夫が改心することはない。  夫に改善を期待できないとしても、それでも、子のためと頑張る妻たちは多い。  しかし、本当に「子のため」と言い切れるのか、考えてみる必要がある。  幼子のいる前での、面前モラ、面前DVは、その脳を損傷することが報告されている。また、モラ夫中心の家庭生活を営むことにより、子どもたちに、モラ文化(モラ夫を育て、許容する社会的文化的規範群)を背中で伝えてしまうかも知れない。  大事なことなので繰り返す。10連休も終盤となるが、夫が在宅し、それを憂うつに感じているとしたら、あなたにも、既に毒が回り始めているのかも知れない。

まんが/榎本まみ

【大貫憲介】 弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
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