モラ夫は支配者でいたいがため、妻に落ち度がなくてもキレる
そして、逃げない妻たちは、現状の選択を合理化する。
前出の外に、例えば、①夫を怒らせるドジで気の利かない自分も悪い、②夫はモラだが、良性のモラ(または単純な亭主関白)と自分に言い聞かせる、などの合理化がある。
しかし、夫が怒るのは、妻を支配するためであり、妻が「ドジで気が利かない」からは本当の理由ではない。
万一、ドジでなければ、例えば、「偉そうにしている」などと絡むだけで、
怒る理由は、何でもいいのだ。
そもそも、一方的に怒ることに、どれだけの正当性があるのか。
愛していれば、加害などしないはずである。
また、仮に、「良性モラ」、「単純な亭主関白」という概念が存在し、それに該当するとしても、モラが猛毒であることに変わりはない。我慢できたとしても、無理による毒は、いずれ心身にまわる。
「妻のワガママ」「妻の心が弱い」モラ夫の責任転嫁であり自己正当化
ところで、多くのモラ被害者は、モラ夫には、モラの自覚がないと言う。
妻の気持ちがわからない、空気が読めないなどの声も聞く。しかし、これは、モラ夫のマジックである。モラ夫たちは、あたかも自分が全くモラをしていないのかのようにとぼける。
これには妻たち、時折、専門家たちまで、騙される。
しかし、法廷などで、モラ夫に質問すると、モラ夫は、自らのモラをかなり正確に再現することができる。
そして、自らのモラを正当化し、
「妻に対する指導は当然のこと」と言い張る。また、妻の気持ちについて、「確かに気落ちしていましたね」と認めたとしても、
「単なるワガママ」「精神が弱い」と妻に責任転嫁する。
つまり、自らのモラ加害や妻の気持ちを認識してはいるが、軽視ないし無視しているのだ。妻が傷つくことよりも、自分の思い/支配的立場が優先するのだ。
この傲慢さは、自らを家長/支配者と位置付けることからくる。したがって、
人格の基礎となっている社会的文化的規範が修正されない限り、モラ夫が改心することはない。
夫に改善を期待できないとしても、それでも、子のためと頑張る妻たちは多い。
しかし、本当に「子のため」と言い切れるのか、考えてみる必要がある。
幼子のいる前での、面前モラ、面前DVは、その脳を損傷することが報告されている。また、モラ夫中心の家庭生活を営むことにより、子どもたちに、モラ文化(モラ夫を育て、許容する社会的文化的規範群)を背中で伝えてしまうかも知れない。
大事なことなので繰り返す。10連休も終盤となるが、夫が在宅し、それを憂うつに感じているとしたら、あなたにも、既に毒が回り始めているのかも知れない。
まんが/榎本まみ
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中