再犯を防ぐカギになる!? 日本初の「受刑者向けの求人誌」創刊

どんな過去も、笑ってネタにできるように

Chance!! に添付されている受刑者へのアンケート用紙

Chance!! に添付されている受刑者へのアンケート用紙

「Chance!!」は2018年4月に創刊され、現在、刑務所や少年院など239施設に配布されている。受刑者が「いい」と思う企業があれば、受刑者は「Chance!!」に添付された専用履歴書に必要事項を書き込みヒューマン・コメディに送る。履歴書は企業に転送され、事業主の判断次第で面接が実現する。  関心を引いたのは、その専用履歴書が受刑者の人となりを映し出すことだ。記入項目は多岐にわたる。罪名や刑期といった基本情報に加え、「施設内での自分の行い」、「この期間は自分にとってどういうものと感じているか」、「再犯の可能性についてどう考えているか」、「再犯しないための決意や具体策等」、「被害者への対応」、「出所後の被害者への支払い意志の有無」等々、本人が厳しく自分を見つめ直す機会となるような内容だ。  今年4月8日時点で、ヒューマン・コメディには、309人から資料請求や相談などを含めた手紙が届き、120人からは履歴書が送られ、37名が出所前に就職が内定し、うち実際に就労しているのは7人となっている。  ヒューマン・コメディは株式会社である以上、数人の役員がいるが、実は社員は社長である三宅さんしかいない。今後も「Chance!!」の発刊は続くが、驚いたのは三宅さんがその利益から手にする役員報酬は月5000円に過ぎないことだ。三宅さんはこう言い切った。 「これで儲けようと思ったら私はぶれます。儲けを優先すると、たぶん、いい加減な会社も誌面に載せてしまうと思うんです」  三宅さんはもう一つの仕事で収入を確保しているが、そこには暗さのみじんもない。三宅さんはこう言い切るのだ。 「人生を喜劇にしよう。どんな過去もネタにして笑って生きられるようにしよう。人様の役に立ち、最後に笑って死ねたら最高の喜劇じゃないですか」  この思想がヒューマン・コメディという社名に表れている。 <文/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
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