再犯を防ぐカギになる!? 日本初の「受刑者向けの求人誌」創刊

出所後のことを悩んでいる人たちのための情報がなかった

三宅さんその2

「『生きづらさを抱える人たち』を対象にした人材育成がしたかった」と語る三宅さん

 ヒューマン・コメディは、出所者などを派遣する有料人材紹介業として始動。同時に、ヒューマン・コメディでも1人でも出所者を受け入れて働いてもらわないと信用されないからと、1人の男性出所者を採用した。  だが誰も長続きしなかった。ある出所者は5日でいなくなり、覚せい剤使用歴のある出所者は、三宅さんの知人が経営する会社に出向させたら突然無断欠勤する。そんなことの繰り返しに、仕事がまったく機能せず収入はゼロ。 「刑事施設のなかで出所後のことを悩んでいる人は山ほどいるのに、当社の存在を知らせる術もありませんでした」  そこで思いついたのが求人誌の発行だった。求人誌を刑事施設に置いてもらえれば、受刑者が直接情報を目にすることで、自分の望む会社を選ぶことができるはずだ。

「人はやり直せる」と言い切る覚悟ある会社だけを掲載

 思いついたらすぐ動く。2017年6月から、三宅さんは求人広告を出せる協力企業を集めるため、縁もゆかりもない建設業界の催しに顔を出したり、今は会社経営者だが元ワルの知人に声をかけたりしては人脈をつくることに腐心した。  同時に、出所者雇用に熱心な知人の協力を得て、法務省矯正局成人矯正課を訪れ、求人誌発行の許可も得た。  そして、ハローワークで見るような無機質な募集要項ではなく、前述のように、インターネットが使えない受刑者が企業の雰囲気をイメージしやすいよう、社長や社員や作業風景の写真を盛り込んだカラーページに社長の肉声も盛り込むレイアウトでの製作に努めた。  一方で三宅さんは「Chance!!」の掲載希望企業に対しては、まず初めに「掲載はやめたほうがいいですよ」と忠告する。「出所者は社会生活に慣れていません。会社に不利益あっても当社は責任をもてません」とも言う。  それでも「採用します。人はやり直せますから」と言い切る覚悟ある経営者はいる。そういう会社だけを載せるのだ。
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どんな過去でも、笑えるように
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