筆者は20年来、ビジネススキルを向上させるプログラムを実施しているが、その演習参加者に聞くと表現力といっても、顔の表現、声の表現、体の表現などいろいろある。しかし、なかでもアイコンタクトのスキルに引きつけられやすいと答える人が最も多い。
たとえマスクを着用していても、最もパワーを発揮できるアイコンタクトは駆使できるのだ。
マスクをしているので、程度の差はあるが、声は伝わりにくくなる。しかし、動作が妨げられるわけではない。言葉を動作で補えばよいことになる。
そのために活用できるスキルのひとつが、
視線を外す方向によって相手を引きつける方法だ。意図的に視線を外す方向を操作して、声が伝わりにくくなる分、動作という非言語表現を発揮して、相手を引きつけるのだ。
たったそれだけのことだが、実際に試してみると、意外に効果があることがわかる。それも、複雑な動作が必要なわけではない。視線を外す方向をコントロールするだけなのだ。数回実施してみると、体で身についてくることがわかる。マスクを着用すべきか否かを延々と議論する代わりに、是非、試してみていただきたい。
質問:視線を外す方向で意図を伝えられる?
視線を外す方向によって、相手が受ける印象が異なるのであれば、意図的に視線を外す方向を操作して、相手にメッセージを送ることも可能でしょうか? それができれば、言語表現に加えて視線を外すという非言語表現で、相手を引きつけることができるのではないでしょうか?
話すことが得意でない人は、そのぶん、視線の外し方で相手を引きつければよいことになるのではないでしょうか。
回答:視線を外す方向でメッセージを伝える
意図的に視線を外す方向を操作して、言語表現ではなく、動作によって、相手にメッセージを送ることが可能です。
たとえば、視線を上に外しながら話すことで、「一緒に考えています」「考えながら話しています」という印象を与えやすくなります。
視線を斜め上に外しながら話すことで、「時間が気になっています」「別のことに気をとられています」という意図を伝えることができます。
視線を横に外しながら話すことで、「否定的な見解を持っています」、斜め下に外しながら話すことで、「確定情報ではありません」というニュアンスを伝えやすくなります。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第132回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある