日本が107億円融資したエルサルバドルの港、4年間で95隻しか寄港していなかった

Puerto_La_Unión

2008年のラ・ウニオン港 photo by CEPA

 日本にとって殆ど注目を集めない国、中米のエルサルバドル。  同国は昨年、台湾と断交して中国と国交を樹立したが、エルサルバドルのラ・ウニオン港を中国が軍事基地にするという懸念が米国より発信されて今もそれが尾を引いている。

日本が107億融資したけど閑古鳥が鳴くラ・ウニオン港

 エルサルバドル政府はそれを全面否定している。が、実はこの港、10年前に同国の経済産業の発展を願って日本政府が日本国際協力銀行(JBIC)を介して2008年に9700万ドル(107億円)を融資したという経緯のある港なのである。  しかし、このラ・ウニオン港、現状は閑古鳥が鳴くほどに閑散としており、2014年から2017年までに寄港した船は僅か95隻、2017年から2018年の負債は1170万ドル(12億8700万円)という厳しい状態にあるという。最近5年間はコンテナー船の寄港はゼロだというのである。寄港しているのは漁船とか小型貨物船だったそうだ。(参照:「El Diario de Hoy」)  それに反して、隣国のホンジュラスとコスタリカは港湾の開発で成功している。例えば、コスタリカでは365日、最大8500teu(20フィートコンテナーを8500本積める船)の寄港ができるようになっており、1200船を捌く能力を備えるまで成長している。(参照:「El Diario de Hoy」)

開発遅れの理由は政情不安定による企業撤退

 これまでこの港の発展がないのは最初の開発プランは国民共和同盟(ARENA)が推進していたが、それに反対していた野党ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)が2009年に政権に就くと、開発プランは振出しに戻り港湾開発の条件の変更などで入札の実施の大幅な遅れが発生。このような開発に官僚が不慣れなこともあって対応に遅れ、当初進出に関心を示していた企業が撤退するという事態になって、2018年まで外国からの企業進出は皆無となったのである。  このような厳しい現状の中でCEPAは日本の銀行JBICへの返済を行っていかねばならないのである。今のところ、負債の残金は4500万ドル(49億5000万円)で、2041年に返済完済を見込んでいるという。2018年だけでも金利だけで150万ドル(1億6500万円)を支払ったという。(参照:「El Diario de Hoy」)  経済相も経験したことのある弁護士で政治アドバイザーのリカルド・エスマハン(Ricardo Esmahan)は3月に紙面『El Diario de Hoy』に寄稿して、ラ・ウニオン港のCEPAの機能不備から開発の遅れについて「国家の恥だ」と言及した。更に、隣国のホンジュラスとコスタリカが港湾の開発で成功している現状からエルサルバドルが発展するには外国からの投資と港湾に熟知したオペレーターの必要性を説いている。
次のページ
中国の軍事利用疑惑がネックで公募進まず
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会