そうした声も受けて、現在に至るまでこの港の発展は全く見られないこのラ・ウニオン港について、港湾自治執行委員会(CEPA)港の運営を任せられるオペレーターを入札で世界から公募する予定にしている。
ただ、それには日本国際協力機構(JICA)からの承認であり、CEPAはこれまでJICAから繰り出されるこの件に関しての質問に答えているというのだが、4月12日の時点でJICAから「公募して構わない」という回答はCEPAに届いていないという。
JICAの回答が煮え切らないのには理由がある。それは、中国がこの港を軍事目的で使用するのではないかという懸念である。
エルサルバドルが中国と国交を樹立すると、FMLNの議員の斡旋もあって中国がこの港の開発に関心を示すようになった。ところが、米国がそれに危険信号を挙げた。というのは、中国の企業APXが進出に関心を示したからであった。APXはハイテクノロジーを備えた軍用機器の生産部門をもっているからである。(参照:「
El Diario de Hoy」)
日本政府は、JICAを通して軍事目的でこの港が使用されることがないという確証を掴みたいようである。そのために、執拗にCEPAに質問を繰り返している可能性があると報じられている。
ちなみに、この懸念に対して、CEPAは今年2月にも軍事使用されないことをJICAに回答したという。(参照:「
El Salvador.com」、「
El Diario de Hoy」)
CEPAでは出来るだけ早くラ・ウニオン港の再建を望んでおり、早く入札を開始して港湾のオペレーターを見つけたいとしている。日本が出資した港がまったく利益を生み出していないことは、日本の資金回収にも影響は少なからずありそうだが、果たしてこの件どうなっていくのだろうか。(参照:「
El Diario de Hoy」)
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身