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コインハイブ(Coinhive)事件の無罪判決が3月27日に出た。また、4月10日に横浜地検が東京高裁に控訴した。情報技術に不案内な警察が暴走したと、多くの人に指摘された事件。その流れについてまとめていく。
まず「
Coinhive」とは、Webサイトに訪問した人に暗号通貨のマイニングを行ってもらい、マネタイズを行うサービスだ。「Coinhive」では、暗号通貨の中でも「
Monero」のマイニングを行う。「Monero」は2014年4月に登場した暗号通貨で、エスペラント語で「通貨」を意味する。
「Monero」のような暗号通貨では、通貨が正しく処理されているかを計算によって確認する。この計算は簡単に行えるものではなく、その計算負荷を分担することで報酬して暗号通貨がもらえる。「Monero」はそうした暗号通貨の中でも、一般のコンピュータ程度で行える計算量になっている。
「Coinhive」は、その「Monero」の計算をWebサイトの訪問者に肩代わりしてもらうことで、マネタイズを行うものだ。
「Coinhive」は2017年に開始したが、2019年3月にサービスが終了した(参照:
Coinhive、3月8日にサービス終了 Moneroの価値暴落など響く、
Discontinuation of Coinhive)。
仕組み自体は斬新だったが、暗号通貨の暴落とともに事業が破綻したようだ。
コインハイブ事件は、この「Coinhive」をWebサイトに設置した複数人が、神奈川県警察など全国の警察によって検挙された事件だ。特に、フリーランスのデザイナー モロ氏が裁判で争っている件を中心に語られる。モロ氏は、ブログで
経緯をまとめているので、まずは時系列を追おう。
2017年9月下旬、モロ氏は「Coinhive」を知り、Webサイトに設置。同年10月下旬、他のエンジニアから「通知を出した方がよい」と指摘を受ける。通知を出す手間を考え、10日後に「Coinhive」を削除。「Coinhive」の導入は、約1ヶ月強の期間となった。
2018年2月上旬、10時頃に警察を名乗る人物から入電。その後、令状を見せられて家宅捜索開始。10時間拘束され、デスクトップPC1台、ノートPC1台、スマートフォン1台が押収される。
同年3月上旬、早朝より警察署で取り調べが行われる。取り調べ終了後、デスクトップPC以外の押収品が返還され、17時頃に解放。デスクトップPCは、OSを含む全データ削除の上、後日返還された。
(この時点で、警察により不当な家宅捜索を受けると、パソコンのデータを全て削除されることが分かる。
パソコンのデータは、まだ犯罪者ではない個人の資産だ。パソコンで仕事をしている場合は、その全ての業務データを消される。その補償は何も行われない。
警察は、目を付けた相手を家宅捜査することで、データを全て消去して、個人に経済的損失を与えることができる。たとえ有罪に出来なくても、この時点で罰金以上の効果がある)
3月下旬、検察庁で取り調べ。罰金10万円の略式命令を受ける。罪状は「不正指令電磁的記録 取得・保管罪」、通称「ウイルス罪」。モロ氏は、略式起訴での罰金10万円に異議を申し立て、刑事裁判に移行する。
(この時点で異議を申し立てなければ犯罪者となる。法の拡大解釈であっても、警察が恣意的に捜査をすれば、犯罪者を作ることができる。異議を申し立てれば、長い裁判による心身、金銭的な損害を受けることになる)
2019年1月9日に第1回公判、1月15日に第2回公判。この第2回公判に証人として出廷したセキュリティ専門家の
高木浩光氏の日記には、この件の詳細が複数回投稿されている。
同年1月17日に第3回公判、2月18日に第4回公判、3月27日に第5回公判で、無罪の判決が出た。モロ氏はその
胸中をnoteで語っている。
検察は「身勝手で再犯の恐れがある」と指摘した。それに対して裁判所が「良質なコンテンツを生み出す上で収益は必要不可欠である」「被告が収益を得ることで結果としてユーザーにも還元され、双方のメリットになりうる」と、検察の意見を強く否定してくれたと。
同年4月10日、横浜地検は横浜地裁判決を不服として、
東京高裁に控訴した。