使用済燃料乾式貯蔵施設に関わるPA講演会に見た「地元目線」の欠如

愛媛県八幡浜市 宇和海の風景

愛媛県八幡浜市 宇和海の風景 5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)

使用済燃料乾式貯蔵施設に関わるPA事業の実態

 これまで、本連載原子力PA編では、一度だけNUMOの高レベル放射性廃棄物最終処分場選定に関する説明会への参加レポート(PA編4)を挟みましたが、基本的には八幡浜市における使用済燃料乾式貯蔵施設に関わる講演会というPA事業についてその背景、講演内容とともに現在日本で行われようとしている使用済み核燃料の乾式貯蔵についてその実態を主として日本に35年は先行する合衆国との比較をした解説をお伝えしてきました。(参照:本連載原子力PAシリーズ1235)  現在世界で最長100年の時間稼ぎによってSF(使用済核燃料)やHLW(高レベル放射性廃棄物)、TRU(超ウラン元素)廃棄物、GTCC LLW(Greater Than C-Class Low Level Radioactive Waste, 日本で言うL1廃棄物)の最終処分を行うまでの時間を得ようという動きが本格化しています。日本では、それらの動きに対して概ね25~40年の遅れで、もはや無意味と化している核燃料サイクル*の一環として中途半端な商業的にも工学的にも極めて合理性を欠いたガラクタ事業を行っていることが露わになっています。 <*そもそも核燃料サイクルは、次の見込みによって成立すると人類にとって理想であり、夢の技術と見込まれていた。 1)1960年代の原子力発電の急伸によって前世紀内にウラン資源が枯渇すると予想された 2)サイクル事業費はたいして高くはつかないであろうという楽観的な見込み 3)原子炉級プルトニウムは核兵器に転用出来ず、高い核拡散耐性を持つと考えられた 4)核燃料サイクルには必須の高速増殖炉が前世紀内に実現すると見込まれた 5)核燃料サイクルによってHLW問題が大きく軽減すると見込まれた  しかし実際には下記のような結論となり、核燃料サイクルは人類規模で完全に失敗したと言って良い。 1)1970年代後半以降にウラン需要は半世紀近く長期低迷している。更にウラン資源の発見が相次ぎ、ウランの資源寿命は1世紀以上と石油並みに長い可能性が出てきた。現状の核燃料サイクルは、研究途上の海水ウラン抽出並に不経済である。なお、海水ウラン抽出が実用化すれば、ウランの資源量は、ほぼ無尽蔵となる 2)サイクル事業費は極めて高額であり、製品としてのMOX(混合酸化物)燃料は、価格が二酸化ウラン燃料の10倍から数十倍となり、性能も目立って劣る。もともと使用済み核燃料=廃棄物を資源化し、50〜100年程度のウラン資源寿命を事実上無尽蔵の5000〜8000年にまで延ばすこと、原料が廃棄物なので安くなるという教義(ドグマ)によって楽観的な想定がなされてきた。現実には、再処理、MOX燃料製造に莫大な費用がかかる。例えばわずか8年の運用で放棄された英国の再処理工場THORPは、その生涯経費が10兆円を遙かに超える可能性が高い。楽観的に見ても再処理プルの商業的合理性は、ウラン価格が現状の10~20倍に高騰せねば得られない。この場合、再生可能エネ、新化石資源との競争力は皆無となる 3)合衆国は、1962年に原子炉級プルトニウムから作ったコアによって、核実験に成功している。これによって原子炉級プルの核拡散耐性は消滅した。IAEAは、原子炉級プルについて兵器級プルとの間に核拡散上の区別をしていない。(参照) 4)高速増殖炉の実用化には全世界で1950年代から大規模な研究・開発がなされてきたが、すべて失敗した。これによって、核燃料サイクルは一周のみに限定され、期待された利点はすべて消滅した。現在、ロシアと中国のみが高速炉、高速増殖炉の開発を継続している。 5) 完全な高速増殖炉多層サイクルが完成すると、HLWとTRU、ウランは大きく削減できる。一方で、FP(核分裂生成物質)やLLW(低レベル放射性廃棄物)は大幅に増加する。結果、1万年単位以上の時間軸では放射性廃棄物は減るが、1000年単位までの時間軸では、放射性廃棄物は大幅に増えることとなる。更に再処理工場は、最悪の汚染となり、デコミッションに天文学的な資金と100年単位の時間を要する>  しかし40年後に解決が極めて困難な問題を抱えて右往左往することが自明であっても、SFの乾式貯蔵そのものはSFの受動的安全性を引き上げますので、望ましい側面もあります。

地元で知りたいことは何か、それに答えたか

 ここで原点に戻り、地元では何に関心を持たれているかを考えてみます。立地予定点の市民の知りたいことは非常にシンプルで、次の四点に要約され得ます。 1)安全か否か 2)なし崩しに使用済み核燃料が居座ることにならないか(恒久化しないか) 3)雇用になるか 4)地元に経済的恩恵はあるか  これらの問いに対し、長沢博士、奈良林博士の講演では答えていたでしょうか。私は、両博士の講演は余り答えになっていないと考えます。  まず、1)の安全か否かについてです。  長沢博士の論旨は、SFのSFP(使用済み核燃料ピット)での保管も乾式キャスク貯蔵も本質的には安全性に差が無く、むしろ原子炉の運転を続けることに伴い、新たなSFが増え、安全性に劣るというものです。これは、脱原子力の論理からは正しいでしょうが、伊方発電所3号炉(伊方3)の運転を40年続けるであろう現状への答えにはなっていません。仮に乾式キャスク貯蔵を阻止したとしても、1号炉2号炉SFPの空きを有効利用すれば、伊方3の炉寿命40年はぎりぎり持ちます。この場合、受動的安全性に劣るSFPに全面依存することとなり、過酷事故(シビアアクシデント,SA)時には福島核災害と同様に極めて重大な危険要因となり得ます。  奈良林博士の論旨は、電事連のPAと同一で、”安全です”、”我々を信用してください”というものです。残念ながら、福島核災害後には仲間内でしか通用しない論理であって、逆効果です。  次に、2) なし崩しに使用済み核燃料が居座ることにならないか(恒久化しないか)についてです。  長沢博士は、明確に運び先がない、事実上の最終処分場に伊方発電所がなる可能性は無視出来ない、むしろ当然の結果としています。  奈良林博士は、この点への言及をしていません。時間切れで言及しなかった地層処分と消滅の項目でよしとした可能性はありますが、完全に行き詰まっている事業と40年後の工業化、商業化の可能性は現時点でほとんど無い技術に依拠することはPAとしては不誠実です。  残念ながら、キャスク撤去の検討が開始される40年後にSFの持ち出し先が存在する可能性は極めて低いです。問題は、その40年後、事実上の消耗品である日本の保管輸送兼用キャスクでは、設計寿命の50年、加速試験での確認済寿命の60年までの最終期限を前に、打てる手が極めて限られると言うことです。1世紀程度の、半ば恒久化させるにたる性能を持たず、移送先が見つからない可能性は大です。これが合衆国など先行国と根本的に異なる事です。  次に3)4)の雇用になるか、経済的恩恵はあるかです。  長沢博士は、この点にほとんど言及がありません。おそらく視点を欠いているのだと思います。そもそも論として、雇用や経済効果は、行き詰まりの原子力発電所ではなく他に、再生可能エネに求めよという論旨と思います。これは具体性に欠き、パンチ力が足りません。佐田岬半島は、大規模風発事業に極めて好適と思われるのでより具体的提案があるべきでしょう。また、廃炉事業も生きた原子炉に比すれば経済効果は限定的です。  奈良林博士も直接の言及はありませんでした。(NUMOのPA映像資料をホームページなどで鑑賞すれば、地元との共存を強調していますが、具体性はありません。)  これは、PAシリーズ5で指摘したように、現行の計画では地元への恩恵は雀の涙ほどしかありません。合衆国方式なら、ある程度の恩恵はあります。  両陣営ともにずいぶんと立地点の経済的恩恵、雇用に対する配慮が足りないと思うほかありません。実はこの点が最大の関心事項でもあります。  核燃料税や補助金に頼ったところで、総需要の創出効果はほとんどありません。まっとうな事業としてお金を創り出す正攻法が強く求められます。
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賛成反対双方とも立地住民の関心に答えず
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