国土地理院の地理院地図
先月下旬、『Googleマップ』が劣化したと各所で報告があった。ゼンリンの地図を使うことをやめて、独自データになったのが原因だと推測された。
新しい『Googleマップ』では、私有地や一般利用できない道路が、通過可能な道として表示されていた。そのことから、スマホの位置情報を利用して、通れる道を推定していると考えられた。そうした推測を裏付けるように、人の多い都会に比べて、人が少ない地域では地図の精度が大きく落ちていた。
ゼンリンの地図の完成度を思うとともに、自動でもここまでできるのかという驚きもあった。Googleのことだ、今後はユーザーからの報告を受けて、地図の精度を上げていくのだろう。
『Googleマップ』として公開されているのは、車のナビに使う目的ではない「無料」の地図だ。Google内部で使う地図は、高精度のものを買うという選択肢もある。そうした目的ではない無料提供する分は、AIにより生成させる。そうした使い分けもできるだろう。
私たちは、当たり前のように無料で『Googleマップ』を利用していた。しかし、Googleの利益に関係のない過剰な機能まで、無料である理由はない。高精度の地図が欲しければ、お金を出して買うという選択肢もあるわけだ。
ここで少し、IT技術者にとっての『Googleマップ』という存在について触れておきたい。今でこそ、マウスのドラッグで自由に動かせるWeb上の地図は、当たり前になっている。しかし、『Googleマップ』が世に出てきた時には衝撃的だった。
『Googleマップ』は2005年2月にベータ版としてサービスを開始した。日本語版は7月に提供が開始されている(
Google マップ ― Wikipedia)。この機能はJavaScriptで実装されていた。同年、Jesse James Garrett氏により「Ajax: A New Approach to Web Applications」という記事が投稿された。
『Googleマップ』と「Ajax」という言葉は瞬く間に広がり、JavaScriptによるWebアプリケーション開発の機運が大きく盛り上がった(
Ajax ― Wikipedia)。『Googleマップ』は、その後のHTML5によるWebアプリケーション時代の先駆けというべき存在で、多くのWeb系技術者たちが強い関心を持ち、参考にした。
また『Googleマップ』では公開当初より、外部から地図機能を利用できるAPIが用意されていた。そのため様々なWeb技術者が、そのAPIを使ったサービスを提供した。『Googleマップ』公開後数年は、Webサービスを組み合わせるマッシュアップで多く利用された。
『Googleマップ』はそうした、IT技術者向けの先進さだけではない。2007年(日本は2008年)に登場したストリートビューは、ネットの世界とリアルの世界を地続きにして人々を驚かせた。その後もGoogleは、様々な機能を追加していった。『Googleマップ』は、IT業界でも革新的な存在として、大きな存在感を示し続けた。