コレア体制下で国際関係では、中国とロシア両国からの影響も広がった。
『Russia: Playing a Geopolitical Game in Latin America』(Carnegie Endowment for International Peace、Julia Gurganus)によると、中国はエクアドルに水力発電設備を建設しており、これは同国内の35%電力需要を満たすという。
ロシアとは石油、銀行、原子力などの分野で協力関係があり、対ロシア経済制裁に伴い農業生産品のロシアへの輸出が増加している。
また、世界最大規模の情報リークサイト、ウィキリークスの創始者
ジュリアン・アサンジはイギリスのエクアドル大使館に匿われていた。このレポートではこの件についてロシアの意向に沿うもの、と書いている。
エクアドルは米州ボリバル同盟(ALBA)にも加盟していた。この同盟は反アメリカおよび西側に依存しない体制を実現するためのもので親ロシアの国々によって構成されている。なお、エクアドルは2018年に親米路線に変わったため脱退している。
コレア体制を脱し、変わるエクアドル。しかしネット世論操作は続く
2006年に大統領となったコレアは当初国民から絶大な人気を得ていた。反米を掲げ、ベネズエラなど反米勢力と友好関係を築き、OPECにも再加入した。さらに、その勢いで大統領の連続再選を禁じていた憲法を改正し、その後、2009年に再選されている。
2017年に大統領に当選したモレノはコレアの後継者と目されていたが、当選後はコレアとは袂を分かち、親米、自由主義的な傾向を強めている。モレノは就任後、諜報機関SENAINも解散した。
『‘Noise and Confusion’: Fake News in Ecuador』(2018年2月7日、Snopes)によると、2017年の大統領選挙では、どちらの候補者の側のフェイクニュースも確認されている。
選挙に先立って、”Ecuador Chequea”という
ファクトチェックイニシアチブが設立された。この選挙の期間中、モレノ(この時点では前大統領コレアはモレノを支持)の対立候補を貶めるような情報がWhatsAppで流れ、フェイクニュースサイトに掲載されたが、それらは拡散した後、すぐに消去されたという。
一方、ファクトチェックも行っている独立系メディアのGKはフェイクニュースがどちらからも発信されていていたとしている。モレノの勝利が決まった時、選挙管理委員会が投票を改竄したという複数のフェイクニュースがWhatsAppを通して拡散した。
そして2018年2月4日に行われた国民投票によって大統領再選は1度のみと決まったため、コレアが再び大統領に立候補することはできなくなった。この投票はコレアおよびエクアドルにとって極めて重要な意味を持っており、ネット世論操作も行われていた。
ただし、この投票ではそれ以前に比べてネット世論操作の痕跡が少なかった。選挙ではなかったので関心が低かったという説もあるが、これまで積極的にネット世論操作を行ってきたコレアの影響力の低下が原因という説もある。
現在の大統領であるモレノがコレアのようにネット世論操作部隊を操っているかどうかは不明である。ただ、ネット世論操作が行われている痕跡は見つかっている(誰が仕掛けているかは不明)。もしかすると次の選挙ではっきりするかもしれない。
◆シリーズ:ネット世論操作と民主主義
<取材・文/一田和樹>