トラックドライバーにとって恐怖の存在。それは「自転車」である

死角に入り、車間を縫って走行する自転車はドライバーにとって恐怖でしかない

トラック運転手にとって恐怖の存在とは……

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。  前回は「トラックが煙たがられる理由」を紹介したが、一方でトラック側にも走行中、正直「邪魔だな」と思う存在がいくつかある。  中でも「邪魔」を通り越し、もはや「恐怖」すら感じる存在なのが、「自転車」だ。  道路には、大きく分けて「自転車」「原付」「バイク」という3種の二輪車が走っている。  自転車は運転免許を要しないものの、他2種と同様「車両」であり、原則的には「車道」を走らねばならないのだが、子どもや高齢者、道路状況によりやむを得ない場合などは、歩道を走ることが許されている。  こうした曖昧な線引きによって自転車は、歩道を歩く歩行者からは「車両なんだから車道を走れ」、車道を走るクルマからは「車両の仲間ならばルールを守れ」と、両道で押し付け合いがなされる存在となっているのが現状だ。  特に車道においては、文字通り「2つの輪っか」に生身のカラダを乗せて走行する彼らは、無防備かつ不安定であるがゆえに、ほぼ全ての自動車に邪魔扱いされてしまいがちなのだが、中でもとりわけトラックにとっての自転車は、時に体中の毛穴が一気に引き締まるほど恐ろしい存在になることがあるのだ。  慣れない自転車通学・通勤を始める人が増える季節。今回はトラックドライバーがサイクリスト(自転車に乗る人)に知っておいてほしいことを紹介していきたい。

トラックと自転車の相性が悪い3つの理由

 トラックがとにかく自転車と相性が悪いのには、大きく分けて以下の3つの理由がある。 1.見えない  トラックの死角については「トラック左後方の死角の危険性」をはじめ、過去に何度も紹介してきた。再度強調するが、トラックは、車体の左側に多くの死角を作る。  そのデッドゾーンに背丈の低い自転車が入り込めば、どれだけ反射板を引っ付けようがライトを光らせようが、その存在には全く気付くことができない。  それに、彼らが身の危険を感じて鳴らすのは「クラクション」ではなく「鈴」。振動音が常にするトラックの車内に、その「チリンチリン」が届くことはほとんどないのだ。 2.動きの予測ができない  自転車はその死角に自ら入り込んでくるうえに、ふらついたりよろけたりするなど、不安定極まりない。  赤信号で止まったトラックの脇をすり抜けようとした自転車が、トラックのエアブレーキからエアが抜ける「プシュー」という音に驚き、転倒・怪我をするというのはよく聞く話だ。  そんな自転車の行動の中でも最も怖いのが、突然車道に出る行為。  朝や夕方、歩道がにぎわう通学路や駅近くで起きやすいのだが、歩道を走っているサイクリストが後ろを振り返ることもなく、突然車道に降り、歩道の歩行者などを追い越そうとすることがある。  車幅の広いトラックの直前でこれをされると、急ブレーキや急ハンドルでも避けられないか、幸いに避けられたとしても積んでいる積み荷が荷崩れを起こし、横転や荷物の破損などの二次的被害を引き起こす可能性があるのだ。
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ドライバー目線で振り返ると自転車時代の自分に恐怖
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