一般ドライバーも歩行者も自転車も知るべき、「トラック左後方の死角」の危険性

橋本愛喜
トラック車内

左後方が見えにくいトラック。 muku / PIXTA(ピクスタ)

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてもらいたい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。しばらくの間、「トラックの車窓から見た隣の危険運転」について紹介してきたが、再び話をトラックそのものに戻し、今回は「トラック左後方に生じる死角や視界不良」について解説したい。

トラック運転時の「見えなさ」

 危険と隣り合わせで働くトラックドライバーには、ある共通した思いがある。 「一度でいいから、一般ドライバーらにもトラックの運転席からの“見えない”を体感してもらいたい」ということだ。  筆者も大いに同感である。  こうした記事を書いている人間が発言することではないかもしれないが、どんなにトラックの危険性を言葉で訴えても、その「車高の高さ」と「死角の怖さ」は、身をもって体感しないとなかなか分かってもらえないところがある。  逆に、一度でもその視界を体感してくれれば、死角に対する理解度が上がり、事故も幾ばくか減るのでは、と思うのだが、残念なことに、一般ドライバーがトラックに乗る機会は、全くと言っていいほど存在しないのが現状だ。  そんな思いの中、トラックの死角に入ったクルマやバイク、歩行者の巻き込み事故のニュースを聞くと、元トラックドライバーとしては、大変心が痛むのである。

トラックからバイクや原付が見えない理由

 トラックの死角や視界不良になりやすいのは、なんといっても「左後方」だ。車体の構造上、その存在は、どうしても避けられない。  ところが、よりによってトラックの左後方は、原付やバイク、自転車の「定位置」でもあり、さらに彼らはそこから、隙を見つけるや否や、最も危険なポイントである「トラックの真横」をすり抜けていこうとする。  トラックドライバーからすれば、それは自殺行為以外の何ものでもない。車幅の広いトラックは、対向車線に同じく大きなトラックがやって来た際、すれ違いざまにミラー同士が接触するのを避けようと、条件反射的にハンドルを左に切ることがあるのだ。その瞬間にバイクがすり抜けをしていれば、間違いなく巻き込み事故を起こす。  時折、「あんなに大きなミラーでも左後方が見えないのか」と聞いてくる人がいるのだが、残念ながらミラーに映らない死角は大変多く、その時の状況によっては、映る範囲のモノでも見えなくなることもザラにある。  中でもミラーの視界を邪魔する意外なものが、「振動」だ。 トラックは構造上、乗用車よりも路面状態の影響を受けやすく、走行中の車内はよく揺れ、ミラーの焦点を狂わす。また、運転席がエンジンの真上にある日本のトラックは、その振動が運転席やミラーに直に伝わるため、ドライバーの視覚も内外のミラーも、常に小刻みに揺れているのだ。  ただでさえ小さい二輪車だ。運転席から物理的に遠い位置に付けられた「揺れる広角レンズ」に映っても、その姿がドライバーの目に入らないことは、珍しいことではないのである。  ちなみに、こうしたバイクなどのすり抜けは、彼らの一方的な行為であるにも関わらず、彼らが接触・転倒して死亡した場合、接触されたトラックのドライバーが過失致死で逮捕されることがある。ただ前をひたすら走っているだけのトラックにとっては、とんだ「とばっちり」なのだ。
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歩道から反対車線に出るトラックは左が見えない!
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