一般ドライバーも歩行者も自転車も知るべき、「トラック左後方の死角」の危険性

トラックの左後輪にかかる負担

 余談としてもう1つ、こうした死角の問題以外にも、トラックの左後方が危険だとする理由がある。 「左後輪の脱輪の多さ」だ。  いわずもがな、日本のクルマは「左側通行」であるが、実は、これこそがトラックのみならず、日本を走る全てのクルマの左後輪に負担を掛けさせる要因になっている。  左側通行の場合、段差に乗り上げたり排水溝などの凸凹を踏んだりするのは、毎度左側のタイヤだ。また、道路は「右高左低」でできているため、必然的に左側のタイヤに体重が乗る。  さらに、左側通行でクルマが左折すると、右折時以上に鋭角に曲がる必要があるうえ、左後方車輪が左折時の「支点」となり、位置が動かないまま、その向きだけが大きく変わる。  これらの結果、左後輪に負荷がかかるのだ。  特に、乗用車よりも車長があるトラックは、乗用車よりも左後輪が支点としての役割を果たす度合いが高まるため、脱輪の危険性も同時に高まるのである。  タイヤの脱輪は、必ず走行中に起きる。一般道で脱輪した左後輪が向かうのは、当然「左側」になる。そこには、何があるか。  前出の「二輪車」や、「歩道」だ。  直径にして1メートルにもなるトラックのタイヤが、時速数十キロの速さで、無防備な生身の体へと突っ込んでいくのだ。  これらの危険を防ぐため、各トラックドライバーは、日頃から視界を良くする工夫や、毎朝の車両点検を欠かさず行っているが、それでも現状、トラックの「左側の危険性」はゼロにはならない。  それゆえ、道路を使う全ての人には、トラックを左側から横切ったり、すり抜けたりすることは絶対にしないでほしい。  また、左後方以外にも死角は多いため、トラックの近くを通過する際は「ドライバーは自分が見えていないかもしれない」と常に予測していてほしい。  歩道を歩いていても、前を向いて道路状況に目を向けてほしい。  そして、機会があるならば、是非一度、トラックの運転席に座ってみてもらいたい。運転はできなくとも、ただ一度、座ってみるだけでいい。それだけで不幸な事故は、大幅に減らせるはずなのだ。 ※今回の記事を執筆するにあたり、ツイッターで現役のトラックドライバーに「運転席から見える右折時の視界の写真」の提供をお願いしたところ、たくさんのドライバーからご協力をいただいた。この場を借りて謝辞を述べたい。 【橋本愛喜】 フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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