異質で異様、そして不可解な大阪ダブル選。問われる有権者の冷静な眼

公明党との蜜月の終焉

 話を基に戻そう。  都構想の制度設計をする場が法定協議会(以下「法定協」と略)である。ここに府議と市議の代表20名が集まり、あれこれ議論を重ねて都構想の設計図を作る。最終的には府議会と市議会の承認を得て住民投票で賛否を決める流れになる。  なお、法定協のメンバー構成は会長(維新)を除くと維新9名に対して自民、公明、共産が計10名。過半数を持たない維新は公明党の協力がなければ一歩も前に進まない。そのため維新は2017年4月、公明党とこっそり密約を結び、法定協の開催と住民投票の実施時期について合意文書を交わしていたことが、後に松井氏自身の暴露で発覚した。  さて、最初は議論に前向きだった公明党だったが、事務方から出されてくる設計図の素案があまりにズサンなことに不信感を持ちはじめる。そのたびに修正と資料追加の注文を出すのだが、事務方からはまともな回答が帰ってこない。結局、法定協での議論はスタートから2年近く経っても設計図の概要さえ見えない状況だった。  これに業を煮やした松井氏は昨年12年末、市内のホテルで公明党の議員らと会談し、「来年4月の統一地方選と同時に住民投票をやりたい」と強く迫った。これに対して、統一地方選に専念したい公明党は「実施は知事と市長の任期が来る11月ごろと認識している」と突っぱねて松井氏らと決別。それ以来、松井氏ら維新は「公明党はウソつきだ」と罵り、公明党の支持母体である創価学会は維新を完全に敵対視、いまや“仏敵”あつかいである。

理念なき「選挙の私物化」

 今回のダブル辞任も公明党との大ゲンカの果てに起こったことであり、しかも知事と市長を入れ替えて選挙をするという想定外の手法に出た。もっとも、松井、吉村の両氏が仮にダブル当選しても法定協のメンバー構成が変わらない限り、都構想議論は1ミリも前に進まない。何のための途中辞任と知事選、市長選かがさっぱり不明。だから不可解なのである。  とは言え、今回のダブル選の裏の狙いははっきりしている。統一地方選と同時に実施することで世間の関心を高めて投票率をあげ、維新候補を1人でも多く当選させるためだ。  橋下氏が去ってからというもの、維新に以前ほどの勢いはない。そこで少しでも風を吹かせ、府議会と市議会で単独過半数を取るのが今回のダブル選の狙いなのだ。世間ではこれを党利党略と呼ぶ。  知事と市長を入れ替えて出馬する「クロス選」も異質である。いや、異様と言ってもいい。  そもそもクロス選は、いわゆる出直し選挙ではない。出直し選とは信任投票であり、知事や市長が自ら掲げる政策の賛否について公職を賭して有権者に問うものだ。そのため公職選挙法第259条2項は出直し選に関する任期の例外を規定し、選挙で当選して復職しても任期は辞める前と変わらないと定めている。なぜか。  これがないと現職の知事や市長はいくらでも任期を伸ばせるからだ。政敵の準備が整わないうちに出直し選に打って出れば当選する確率は高い。そのたびに4年の任期が手に入る。事実、過去にはこのようなことが国内各地で起こり、そこで公職選挙法を一部改正して任期の例外規定を設けた経緯がある。  ところが、さすがの公職選挙法もクロス選までは想定していなかった。完全に法の抜け穴で、違法ではないが脱法行為と呼んで差し支えないと思う。こんな事態が許されるのなら知事と市長が示し合わせば、いつでもクロス選に打って出られる。知事選、市長選は現職が有利の実情から見て、当選する確率は高くなるだろう。
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民主主義を踏みにじる維新の非道
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