民泊で人生の再生をはかったシングルマザーの話~金欠フリーライター、民泊をはじめる(10)

よく言われる「迷惑な外国人」の言動とは何か?

 すぐに民泊が軌道に乗ったサユコは、2部屋を貸しに出していたわけだが、一年のピークになる桜の時期には一部屋で大卒初任給分くらいの売り上げがあがったという。  もう一つの特徴としては、サユコの家に滞在するのは2か月・3か月といった長期の人が多いということである。場所柄もあるだろうが、企業へのインターンシップや、日本語学校への留学などで来ることが多いという。  ここで筆者は「民泊をやってて悪かったことは?」と聞いた。それも聞かなければジャーナリズムとして成立しないではないか。するとサユコが「悪いこと」としてあげたのは民泊そのものではなく、「取材」に関することだった。 「私は今までにもこうやって取材を受けることが結構多かったのですが、編集の意図なのか“これくらい儲かるぞ”みたいな感じにされてしまって、それでネットで叩かれたりとか。でもゲストに関しては95%はいい人ばかりでしたよ」  つまりは、5%は悪いゲストもいたということか。 「同居型でやっているのにずっと部屋に引きこもっている人がいるんですよ。それで滞在中ずっと気まずくなったりとか。でも最近はほとんど長期で、いい人しか来ませんね」

筆者が遭遇した「悪いゲスト」の事例

 筆者宅で言うと、悪いゲストが二組だけ来たことがある。  一組は英国人の自称カメラマンとフィリピン人の自称ライターの男二人組だった。夜九時過ぎにジムで運動とシャワーを終えて帰宅すると、この二人が「こんな家には泊まれない」と喚いている。「何が問題なのか」と聞くと、「部屋が汚い」という。さすが自称写真家だけあって部屋の写真を撮って「この部屋がきれいと言えるのか?」と問い詰めようとする。皮肉なのは、その写真の部屋は筆者の寝室だということだ。多少散らかっていても当然である。  当然彼らの部屋は清掃しているわけでそこで責められるいわれはない。すると今度は「高価な機材を持ち歩いていて、個室にカギがない部屋には泊まれない」とか言い始めた。 「機材は高価かも知らんが、中身の写真は全然大したことないくせに」という言葉が喉まで出かかったが、さすがにそれはこらえた。 「オレが何年民泊をやっていると思っているんだ? 台所のテーブルにヴィトンの財布を置いておいても誰も盗んだことないぞ。そんなにほかのゲストやオレが信用できないかね?」と聞くと「信用できない」という。  そんなに信用できないなら、カギがあるホテルに泊まればよい。元々古民家で、しかも一泊25ドルとかで二人個室に泊まれるのに、何の文句を言っているのか。  当然、先方はAirbnb社を通じて筆者に返金を求めてきた。筆者もそうなることがわかっていたのですぐに同社コールセンターへ連絡し、今までのやり取り等全てを提示したうえで返金はしない旨を伝えた。結果は、筆者の全面勝訴だった。  もう一組はオーストラリアの父子だったが、まさに「ホストとコミュニケーションしない」タイプだった。ヤフコメなどが言う「迷惑な外国人」はこの二組だけである。  次回はサユコが英語の問題をどう克服しているのか、そして民泊がサユコの人生の方向性をどう変えたのかを検証していきたい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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