家族全員で民泊を始めたタエコ一家。これまで多くの外国人ゲストを受け入れ、トラブルもないという
やたらと目の敵にされがちな民泊であるが、その社会的効用について、関心を向けられることは少ない。
そこで、筆者自身のケースをはじめ、数々の民泊経営事例を紹介する本稿。今回は、家族全員で民泊に取り組んできた事例を紹介したい。
タエコ(以下、敬称略)は六十代半ば、ユイは三十代後半の母娘である。2015年11月頃から民泊を始めたという。現在はタエコ夫妻が所有するアパートの一階にユイ一家が住み、二階の二部屋を民泊として貸し出している。
「印象的なゲストのことを話し始めるとキリがありませんが、近くに体育館があることもあり、一度フェンシング国際大会に出場するウクライナ代表の選手が泊まりに来たことがありました。民泊をやっていなければ絶対に会えないような人ばかりと知り合えて、楽しいことしかないですね。」(ユイ)
「娘はいま子供二人いますが、民泊を始めたころはちょうど産休に入って自由な時間ができた頃でした。子育てをしながらできるという意味では民泊は最高の仕事ですよ」(タエコ)
筆者が自宅を購入し、民泊を展開する千葉県我孫子市には「空き家バンク」が絶賛活動中である。千葉県の東京通勤圏内でこれなのだから、ほかの自治体や田舎は推して知るべしだ。もし筆者にどこかの空き家バンクを一つまかせてくれて、民泊をできるようにするならば、おそらく一年以内に大部分を埋められるだろう。
「タカさんは“貧困脱出“とおっしゃいますが、私はリタイア世代こそ民泊をやるべきだと思います。世田谷区のうちの近所の町内会にも空き家があるんですよ。
そこを町内会が管理して、町内会員のシルバー世代に民泊を運営させるんです。町内会には様々なことができる老人がたくさんいます。英語ができる人、運転ができる人、掃除が得意な人、書道やお茶・華道をたしなんでいる人、料理が上手な人、このような老人たちが自分のできることを発揮して民泊を運営するのです。
そうすれば空き家も活用できるし、老人たちに仕事も提供できる、そしてお小遣い稼ぎにもなるのです。でも今回の民泊新法では空き家を利用して運営することは簡単にできなくなりました」(タエコ)
続いて、筆者は「今まで変なゲストはいなかったか、トラブルはなかったか」と聞いた。すると母娘が同時に「いないね」「そんなの一人もいません」と断言した。
「うちの場合で言うとこの人(娘)が予約までのメールのやりとりを担当しているのですが、メールを見れば大体どんな人かわかるじゃないですか。ですから、それで困ったとか、問題を起こした人というのは一人もいませんね」(タエコ)
もちろん、これには理由がある。
「私たちは、ゲストが到着する日には必ず駅まで迎えに行きますから」(ユイ)ということである。ビジネスホテルを運営していたら、絶対に提供できないサービスである。