「OODAループ」といえば、筆者はすでに、日本で経営レベルでのコンサルティングに導入している、
『「すぐ決まる組織」のつくり方―OODAマネジメント』(フォレスト出版)の著書もある入江仁之氏の話を紹介している(
「日本を支配する呪縛『PDCA』は日本ガラパゴスの概念。激変する現代社会では新しい理論が必要」「『PDCAの次はOODAだ!』と飛びつくなかれ。日本企業がOODAを即導入することの危険性」参照)。
詳しくはこの2冊の本を併読していただきたいが、入江氏は今回の『OODA LOOP(ウーダループ)』の読み方について次のように評価する。
「ジョン・ボイド理論を最も熟知しているのがジョン・ボイド氏と研究をともにしたチェット・リチャーズ氏です。これまでOODAループ理論を紹介した英文の書籍が数冊ありましたが、リチャーズ氏のこの原書は良書であり私自身も参考にさせていただいてきました。
本書で議論しているビジョン、戦略と計画の位置付けは、ビジネスの現場で戦略の遂行に苦労している人たちに自信を持たせてくれるインパクトのある指摘です。ビジョンを実現するために戦略があるのです。戦略の遂行のために計画があります。
加えて原田勉氏は訳者解説で、ビジョンとミッションの関係をリチャーズ氏に再確認した上で、ビジョンがミッションの上位概念だと紹介されています。これは、日本企業の経営者に対しても重要な指摘になります。ミッションを目的に掲げてその実現のために中期経営計画を立ててきた企業に対して大きな問題提起となることでしょう」
また、その後の研究の成果を知ることがOODAループの深い理解につながると入江氏は指摘する。
「本書では、事例としてドイツの電撃戦などOODAループ導入以前の戦いを中心に扱っています。その後、ジョン・ボイド氏が戦略策定に関わったと明らかになった湾岸戦争でOODAループが大きな成果を出しています。そして、OODAループは中露やテロリストを含め世界の軍事戦略を一変させたのです。
OODAループが前提としている自律分散組織の理論は、リチャーズ氏が出版した時代から大きく発展をしています。また、ジョン・ボイド氏は人間の心理的側面をも深く研究しOODAループに取り込んでいます。
その後OODAループ理論は行動経済学や心理学そして人工知能などの研究により目覚ましい発展を遂げています。これらによって、OODAループは『あらゆる分野に適用できる戦略の一般理論』になっているわけです」
PDCAの呪縛に陥った日本経済から脱却するために、OODAループの一層の普及が期待される。
<文/松井克明(八戸学院大学講師、地方財政論)>