日本を支配する呪縛「PDCA」は日本ガラパゴスの概念。激変する現代社会では新しい理論が必要

松井克明

「PDCA」という言葉は、日本人が作った

pdca「PDCAほどすぐれたツールはありません」と自信たっぷりに語る経営コンサルタントを見たことがある。生産の現場だけではなく、政府レベルから企業のイノベーション、製品開発、そして教育や議会まで、多くの分野で導入されているPDCA。

 PDCAとは、プラン、ドゥ、チェック、アクション(Plan-Do-Check-Action)の頭文字をとった、計画をもとに、行動し、チェックして、改善するという継続的改善手法だ。日本ではPDCAに関する本が多く出版されており、PDCAサイクルを回すことがビジネスマンの鉄則のように扱われている。

 しかし、最近ではPDCAに疑問を呈する記事も目立つようになってきている(参考記事:日本が世界から劣後する一因が「PDCA」のやり過ぎ 世界は「デザイン思考」に –井上久男氏のYahoo個人)。しかし、このPDCAは日本オリジナルのドメスティックなものだという事実をご存知だろうか。経営コンサルタントの入江仁之氏はこう語る。

「実は、PDCAという言葉は日本人が作ったのです。戦後、来日した統計学者デミングによる統計的品質統制 (SQC, Statistical Quality Control)をテーマにした講演がきっかけです。デミングは師であるウォルター・シュワートの『仕様 Specification →生産 Production → 検査 Inspection 』からなるシュワートサイクルから影響を受けた『設計(Design)→生産(Produce)→販売(Sell)→再設計(Redesign)』のサイクルを説明しました。

 ここで注意したいのは、このサイクルを構成する各ステップが、複数の異なる部門や異なる職種にまたがっていることです。彼はこのサイクルを継続して回すことが重要だと主張しました。この講演を主催した日本科学技術連盟(日科技連)の幹部がデミングの講演を聞いたあとに打ち出したのがPDCAなのです。

 日科技連がPDCAを提唱したのは、フレデリック・テイラーの科学的管理を源流にして、生成されてきた管理マネジメントや、アルビン・ブラウンの計画(Plan)、実(Do)、点検(See)からなる『PDSサイクル』を採用していたという背景もありました。PDCAが工場の品質統制・管理の世界で、60年間支持されてきたのです。

 たしかに、品質を高めることを要求される統計的品質管理において重要なのは、『ブレをいかになくすか』ということであり、人間的な要素がかかわらない技術的な世界です。また、科学的な検証の考え方になじむので、業務の性質によってはPDCAも有効なのです。

 しかし、PDCAを経営など工場以外に適用するには、時代が変わり過ぎました。現代のように前提条件がどんどん変わっていくような時代に適応し、今まで想定してなかった世界つまりビジョンを実現するためには、計画の前に戦略が必要になってきます」(入江氏)

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