15年前と変わらぬ「自己責任バッシング」とイラク戦争の未検証
安田氏が解放された昨年はイラク戦争から15年。今年4月は、イラク支援エイドワーカーの高頭菜穂子氏がファルージャで武装勢力に拘束され解放され、帰国後に「自己責任バッシング」の嵐が巻き起こってから15年になる。
開戦した英米両国政府ですら誤った戦争だと認めざるを得なくなったイラク戦争には、日本政府はいち早く支持を表明し、憲法違反の自衛隊の海外派遣も行った。しかし、そうした政策判断は間違いではなかったのかどうか、いまだに検証がなされていない。そして15年前と相変わらず、世界でも異常な「自己責任バッシング」が安田氏の解放に際しても巻き起こった。
このように無反省かつ無責任に喧伝される自己責任バッシングにカウンターしていくには、安田氏が戦場で取材してきた事実とその意義を、多くの人に語っていただく機会を設けることではないか。
その思いゆえに、筆者は今回の報告会を主催した。結果としてたくさんの参加者が集まり、特に若者の出席が目立っていた。日本の市民社会には、健全な良心を持つ人々がたくさんいるのだとの確信を得た。そして、安田氏と各人が繋がるとともに、安田氏の話をともに聴いた人々が新たに互いに繋がる機会ともなった。
今後も戦場ジャーナリストなど、世界の深刻な現実を伝える方々の生の声を伝え、市民に考える機会を創っていきたい。そうした受け皿となる市民社会の多様なネットワークを駆使して繋がっていくことで、この世の中をまっとうなものにしていく連帯の力を創ってきいきたい。
<文/岡林信一>