元エリート証券マンの失墜。なぜ彼は想定被害額20億円とされる事件を起こしたのか?

匠マネジメントが破綻するまで

匠マネジメントが破綻するまで

 そんな杜撰な運用にもかかわらず、配当の高さから出資希望者は増え続けたたという。ここで杉本氏は2つの過ちを犯す。1つは、出資者を49人以内と定める私募ファンドの体裁を保つため、50人目以降の出資者には匠マネジメントの社債を発行するかたちで運用資金を増やし続けたこと。これは脱法行為にほかならない。もう1つはブラジルレアルに対する見通しの甘さだ。 「’15年からレアルが暴落を始め、ピーク時から半値近くに下がり、配当を維持するのが厳しくなりました。そのため、買収した牧場を売却し、自己資金も投入し、ある銀行からは保有する債券を担保に年利1.9%で融資を受けて、ブラジルレアル建て債券を買い下がり続けたのです」  それでもレアルに反騰する気配は見られなかった。結果、’17年から配当の遅延が発生。9月には配当が停止した。同年末に3人の出資者が損害賠償請求訴訟を起こすと、’18年2月には匠マネジメントの「不法行為」が認められ、賠償金1800万円の支払いを命じる判決がくだされたのだ。 「匠ユニキャストという子会社は適格機関投資家の届け出を行っていたのですが、親会社の匠マネジメントは届け出を行っておりませんでした。その無登録業者が社債を発行して資金を集めていたとして不法行為が認められたのです。事実上、私募ファンドの枠を超えて運用していたので、その指摘は受け入れざるをえません。でも、訴訟を起こされた投資家さんを含めて、長いこと投資してくれた方には元本以上の配当をすでにお支払いしていたことはわかってほしい。あくまで、元本未返還分として1800万円の賠償金の支払いが民事訴訟で確定したんです。本当はその資金で元本割れを起こしているお客さんに少しでもお返ししたかったんですけど……」  こうして匠マネジメントは事実上破綻。元エリート証券マンは無一文に転落した。 「嫁には愛想をつかされ離婚。私は親戚の援助と生活保護を受給しながら生活している状況です。ただ、一部の投資家さんはいまだに『もう一度運用してほしい』と言ってくれているんです。そうした方たちから、わずかながら資金援助もいただいて、ひっそりと暮らしています……」  報道では想定被害額は20億円とされるが、杉本氏によれば、未返済分は8億円だという。杜撰な運用で投資家のお金を失い、金商法違反の疑いも濃厚となれば、同情の余地はないが……本人の懺悔録をどう受け止めるか? エリート証券マンの転落人生を反面教師にしたい。 <取材・文/池垣 完>
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